2.「桜」
ずっと自分の名前が大嫌いだった。春に生まれたからって名前の付け方が安直過ぎるんだよ。おかげで私は小さな頃から買ってもらう洋服はいつもピンクのものばかりだったし、友達からは「女の子らしくて可愛い名前だね」なんて言われて勝手にラベル付けをされていた。私は、本当は女の子なんかに生まれたくなかった。可愛らしくなんてなりたくなかった。ただ、強い人間になりたい。ずっと心のどこかで名付け親のおばあちゃん文句を言いたかったけど、私が文句を言う前におばあちゃんは死んでしまった。そんな私の名前に込められた本当の意味を教えてくれたのは、私の名前と同じ由来の意味を持つ従姉妹の千恵理だった。