• ブルームバーグ日本版:ウクライナ、原発で緊急事態も-ロシアの空爆で変電所破壊の恐れ
  • ロスアトム、ドイツからの納入遅れによりトルコ原子力発電所向け機器を中国に発注
  • タス通信:ブルガリア、原子力発電所向けロシア機器の販売についてウクライナとの協議を延長
  • フィンランドで記録的電気料金を予想:一部の原子力発電所が停止、風力発電も減少
  • スウェーデン、原子力発電所新設に予算を計上
  • ウェスティングハウスと韓国・現代建設が北欧の新設で提携
  • 視点: 世界原子力シンポジウムの主な成果
  • オラクル、3基のSMRを動力源とするデータセンターを計画
  • オレゴン州ユマティラ郡がSMR導入への第一歩を踏み出す
  • 農村部の協同組合への助成金がパリセーズ原子力発電所運転再開をさらに支援
  • 戦争がカザトムプロムの西側へのウラン輸送を妨げる
  • セントラス、ウラン供給で韓国水力原子力と条件付き契約を締結
  • 米国、HALEU供給増加のために核兵器庫に目を向ける
  • ヒンクリーポイントB原子炉の燃料撤去作業が完了
  • コネチカット州 ミルストン発電所の危険廃棄物保管庫閉鎖の認可を申請
  • ロスアトム、ロシアの原子力潜水艦200隻以上の解体完了を発表
     

ブルームバーグ日本版:ウクライナ、原発で緊急事態も-ロシアの空爆で変電所破壊の恐れ

ウクライナのハルシチェンコ・エネルギー相は9/10、国内のエネルギー網に対するロシアの空爆が続けば、ウクライナの支配下にある原子力発電所3カ所のうち1カ所(筆者注:EUとの国境に最も近いのは写真のリウネ原発)で緊急事態を招く可能性があると警告した。同相はキーウからブルームバーグ・ニュースとのインタビューに応じ、ウクライナには何千もの変電所があるが、原発につながる10カ所の重要な変電所が危機にひんしており、破壊されればウクライナに停電が広がり、放射能による緊急事態を引き起こす恐れがあると述べた。また、ロシアの集中的な攻撃が原子力リスクを欧州連合(EU)加盟国との国境に近づけているとも指摘。ロシアは「自分たちのしていることを正確に理解している。原発の安全にとって極めて重要な変電所に対する攻撃は偶然ではない」と語った。

筆者注:このような事態を受け、IAEAは変電所の監視を強化する方針を打ち出しているが、具体的方策については、まだ情報発信は見られない。

ウクライナ、ヴァラシュのリウネ原子力発電所。撮影:ロマン・ピリペイ/ゲッティイメージズ

関連報道:

https://www.scmp.com/news/world/russia-central-asia/article/3278086/ukraine-warns-russian-strikes-power-grid-could-spark-nuclear-crisis 

 

ロスアトム、ドイツからの納入遅れによりトルコ原子力発電所向け機器を中国に発注

ロスアトムは、ドイツのシーメンス・エナジーAGからの納入が遅れているため、トルコ初の原子力発電所向け機器を中国に代替発注した。トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領がドイツのオラフ・ショルツ首相に訴えたにもかかわらず、遅延問題は解決されず、アックユ原子力発電所の建設スケジュールを維持するために代替策を模索せざるを得なくなった。トルコのアルパルスラン・バイラクタルエネルギー大臣は、この遅延により発電所の建設が数か月遅れたと指摘した。「ドイツが遅延について納得のいく説明をしなかったため、プロジェクトに影響が出ている」とバイラクタル大臣は述べた。「しかし、ロスアトムはすでに中国に代替発注を行っている」この機器は、240億ドルの発電所から送電網に電力を送るガス絶縁変電所に必要となる。​​シーメンス・エナジーの広報担当者は、同社は輸出管理法を遵守していると述べた。

「これは政治的決定であって、国際制裁や財政、法律上の問題の対象ではない。最高レベルでの協議にもかかわらず進展はなかった」とバイラクタル大臣は9/11、トルコ国営アナドル通信に語った。同相はまた、トルコで大規模な事業を展開しているシーメンスが「この費用を負担する」可能性があるとも指摘した。

(写真:アックユ原発会社)

関連報道:

https://www.moscowtimes.ru/2024/09/11/germaniya-ostavila-bez-oborudovaniya-rossiiskuyu-aes-v-turtsii-a141937 

 

タス通信:ブルガリア、原子力発電所向けロシア機器の販売についてウクライナとの協議を延長

ブルガリア議会は、(建設が中断された)ベレネ原子力発電所向けのロシア製機器(原子炉2基を含む)の販売(訳注:フメリニツキー原発増設への流用が目的)に関するウクライナとブルガリアのエネルギー大臣間の交渉期限を180日延長した。会議は議会の公式ウェブサイトで放送された。この問題が審議されたのは、議員グループから、機器コストの市場評価を見直した上で、ウクライナ国営原子力発電会社エネルゴアトムの承認を得るよう提案があったことが理由。左派系議員を中心としたグループは交渉の継続に断固反対し、ベレネの設備の一部、特に蒸気発生器は国内のコズロドイ原子力発電所のニーズに使用できることを強調し、そのような決定は「国のエネルギー安全保障を脅かす」ものであり、設備の売却価格はブルガリアにとって不利であると指摘している。議論は1時間半続いたが、原子炉その他の設備の売却イニシアチブの立案者は議論に参加せず、最終的に、議会の過半数は、プロジェクトを支持することで議決した

 

フィンランドで記録的電気料金を予想:一部の原子力発電所が停止、風力発電も減少

フィンランドは、1 月の記録的な電気料金が再び高騰すると予想している。オルキルオト原子力発電所2号炉がタービン発電機故障で停止し、ロビーサ原子力発電所では保守作業が行われている。一方、風力発電は減少している。フィンランド国営エネルギー会社ガスムは、電気料金が 1kWh あたり 1ユーロ(157円/kWh)に上昇する可能性があると警告している。

ロビーサ原子力発電所(写真:fortum.com)

 

スウェーデン、原子力発電所新設に予算を計上

スウェーデン政府は、化石燃料を使わない電力生産を拡大するため、2025年に10億スウェーデンクローナ(137億円)を超える投資を提案している。これには、原子力発電分野のパイロットおよび実証プロジェクトへの投資拡大と、新規原子炉の許可手続きの合理化が含まれる。スウェーデン政府は9/9の声明で「2045年までに実質ゼロ排出を達成しなければならないが、気候変動の前提条件は、あらゆる種類のエネルギー生産に向け化石燃料を使わない電力の適用を大幅に拡大することだ。したがって、政府は2025年の予算案で、エネルギー供給の増大と安全性を確保し、グリーン移行を促進するために、2025年に10億スウェーデンクローナを超える投資を提案している。」と述べた。また政府は、スウェーデンは将来の電力需要を満たし、電力システムにおける供給の安全性を高めるために原子力を必要としていると述べた。「新たな原子力発電の拡大を可能にする政府の取り組みは、現在、より集中的な段階に入っている」という。

大臣らは記者会見で予算案を発表した(画像:regeringen.se)

 

ウェスティングハウスと韓国・現代建設が北欧の新設で提携

米国のウェスティングハウス・エレクトリック社(WH)と韓国の現代建設は、スウェーデンとフィンランドで AP1000 技術の機会を追求するための提携契約を締結した。この契約に基づき、WHはAP1000技術の設計と開発を提供し、現代建設は同プロジェクト向けに一般産業エンジニアリングと建設サービスを提供する。この提携契約は、2022年5月に両社が締結した、世界的なAP1000プラントの機会に共同で参加するための戦略的協力契約に基づいている。当時、現代建設は、この契約により、WHのAP1000プラントに適用されたエンジニアリング、調達、建設(EPC)能力を実証する機会が得られると述べていた。

(画像:WH)

視点: 世界原子力シンポジウムの主な成果

世界原子力協会(WNA)のサマ・ビルバオ・イ・レオン事務局長は、原子力セクターの年次集会、世界原子力シンポジウム2024は業界にとって明確な機会を示したと述べた。

2024年は、世界原子力シンポジウムやその他の原子力会議に原子力産業外から参加する代表者が増えていることも含め、過去最高の 800 名を超える代表者が参加。2024年のテーマ「モメンタムをエネルギーに」は、原子力に対するモメンタムが高まっていることを強調した。世界のエネルギー情勢の緊急性を認識し、私は代表者たちに、グローバルに考え、協力し、解決策を見つけるために団結し、原子力エネルギーの可能性を最大限に引き出すよう奨励した。

(画像:WNA)

 

オラクル、3基のSMRを動力源とするデータセンターを計画

オラクル社は、AIによるエネルギー需要の増加に対応するため、原子力を動力源とするデータセンターの建設を計画していると、ラリー・エリソン会長が語った。「私たちが立地した場所と電力供給地は、すでに3基の原子炉の建設許可を得ています」とエリソン会長。「これらはデータセンターに電力を供給するための小型モジュール式原子炉(SMR)だ。状況はどんどん狂気じみているが、これが今ここにある現実だ。」

2023/9/11、カリフォルニア州レッドウッドショアーズにあるオラクル本社(ジャスティン・サリバン | ゲッティイメージズ)

 

オレゴン州ユマティラ郡がSMR導入への第一歩を踏み出す

オレゴン州ユマティラ郡は、立地を許可する法律を起草するために法律事務所と3万ドルの契約を結ぶことを許可し、小型モジュール炉(SMR)の追加に向けて動き出した。このイニシアチブは、実質的に原子力発電所を禁止する既存の州立地法を含む、重大な規制のハードルに直面している。

オレゴン州ペンドルトンのユマティラ郡裁判所 アントニオ・シエラ / OPB

 

農村部の協同組合への助成金がパリセーズ原子力発電所運転再開をさらに支援

米国農務省(USDA)は、ミシガン州のパリセーズ原子力発電所から電力を購入するために、ウルバリン電力協同組合とフージャー・エナジーに数億ドルを授与した。この資金は、「Empowering Rural America(”New ERA”)」プログラムを通じて授与され、発電所の運転再開のための公的資金は 24 億ドルを超える。

ミシガン州グレッチェン・ホイットマー知事は、元知事で現DOE長官のジェニファー・グランホルム氏とともに、閉鎖中のパリセーズ原子力発電所を再稼働させるための15億ドルの連邦融資を3月に発表した。これは再稼働に向けた公的補助金の数回のうちの1回だった。(ブリッジ・フォト、ケリー・ハウス撮影)

 

戦争がカザトムプロムの西側へのウラン輸送を妨げる

カザトムプロムは、ロシアとウクライナの戦争により、西側諸国へのウラン供給で困難に直面しているとメイジャン・ユスポフ CEOは述べ、ロシアのサンクトペテルブルグを経由する従来の輸送ルートは、制裁のリスクにより、もはや実行不可能であると指摘した。

カザフスタン産の天然ウラン製品は、世界の一次供給量の43%以上を占めている。(画像提供: カザトムプロム)

 

セントラス、ウラン供給で韓国水力原子力と条件付き契約を締結

セントラス・エナジーは、低濃縮ウランについて韓国水力原子力(KHNP)と10年間の条件付き供給契約を締結した。この契約は、オハイオ州のアメリカン・セントリフュージ・プラント(ACP)におけるウラン濃縮能力の増強を支援するものであり、KHNPの核燃料供給元多様化に向けた重要な一歩となる。

vchal/iStock、ゲッティイメージズ経由

 

米国、HALEU供給増加のために核兵器庫に目を向ける

米国は古い核弾頭を再利用し、兵器級ウランと低濃縮ウランを溶かして濃縮度5%超低濃縮ウラン(HALEU)を製造し、先進型原子炉の燃料に転用する。この構想はロシア産ウランへの依存を減らすことを目的としているが、解体された核弾頭からの供給は不十分であり、国内濃縮を増やすよう求めている。

この鋳型には溶融した高温のHALEUが詰め込まれている。米国の古い核弾頭から一部作られたものである。(画像:米国家核安全保障局(NNSA))

 

ヒンクリーポイントB原子炉の燃料撤去作業が完了

英国サマセット州ヒンクリーポイントB原子力発電所の改良型ガス冷却原子炉(AGR)2基のうち1号炉の燃料撤去作業が完了した。ヒンクリーポイントB原発は、1976年2月に送電開始。2022年8月に恒久停止されるまでに3,110億キロワット時以上の電力を発電し、燃料撤去段階に入った。燃料撤去では、各原子炉から300以上の燃料チャネルを取り外す。燃料チャネルは、(黒鉛スリーブを)取り外された後、サイト内の燃料貯蔵ポンドに運ばれ、冷却後、使用済燃料容器に詰められ、鉄道でイギリスのセラフィールドサイトに輸送される。

ヒンクリーポイントB(画像:EDFエナジー)

 

コネチカット州 ミルストン発電所の危険廃棄物保管庫閉鎖の認可を申請

ドミニオン・エナジー社は、コネチカット州エネルギー・環境保護局に対し、ミルストン発電所の有害廃棄物保管庫3基を閉鎖する承認を求めた。この計画は、NRC(原子力規制委員会)が規制する廃棄物を除くもので、すべての危険物を除去し、サイトを除染することを目的としている。パブリックコメント期間は10月1日まで。

 

ロスアトム、ロシアの原子力潜水艦200隻以上の解体完了を発表

ロスアトムは、退役した原子力潜水艦数十隻の解体を含め、ロシア極東における核遺産問題の解決に向けた取り組みが成功したと発表した。同社によると、2022年までに退役したロシアの原子力潜水艦は合計202隻が解体されており、そのうち82隻は極東のものだ。また、使用済核燃料はすべてこの地域から撤去されたと付け加えた。同社によると、解体された原子力潜水艦の原子炉室は、陸上の安全な場所にある特別に作られたコンテナに収められ、耐腐食保護コーティングの状態確認などの放射線監視とメンテナンスの対象となっている。旧来の核物質の浄化活動や、ラズボイニク湾貯蔵施設などの新しい開発による海と沿岸環境の保護に向けた動きは、過去30年間、特に日本をはじめとする他の国々によって支援されてきた。

(画像:ロスアトム)