7/27~7/29は休刊し、7/30に再開します

  • 中国のペブルベッド原子炉が「メルトダウン」試験に合格
  • 報告書:オーストラリアはSMR市場が成熟するまで待つべきだ
  • KHNP、チェコの原子炉の契約交渉を開始
  • ロパワーとフルアーが SMR プロジェクトの FEED 2 契約を締結
  • ブラジル・アングラ3号機のパブリック・コンサルへの回答期限を延期
  • 米ネクステラ、デュアン・アーノルド・プラントの運転再開を評価
  • テキサス工科大とナチュラが溶融塩炉プロジェクトで提携
  • 意見記事:米国は海外での原子力発電所建設の機会を追求すべき
  • カンザス州立大学のエンジニアが高温センサーを開発
  • 英国がHALEUデコンバージョンコンペを開始
  • NANOのウォーカーCEO、マイクロ原子炉技術と燃料について語る
  • 世界初の核融合発電プラントは「英国のNASA」
     

中国のペブルベッド原子炉が「メルトダウン」試験に合格

中国の石島湾原子力発電所で行われた新たな試験で、同発電所が自然に冷却できることが確認された。これは、研究者らによると、商業規模の固有安全性を達成した業界初の画期的な出来事である。石島湾発電所は、ペブルベッドモジュール(HTR-PM)を備えた実証用高温ガス冷却炉で、2023年12月に営業運転を開始した。石島湾の10万kWの2基のユニットには、ビリヤードボールほどの大きさのグラファイトシェル(「ペブル」と呼ばれる)に包まれた極小のウランカプセルが収容されており、燃料棒を備えた従来の原子炉よりも燃料のエネルギー密度が大幅に低くなっている。原子炉が過熱状態となると、自然に核反応を減速させ、システムが冷却される。中国清華大学の研究者らは、石島湾発電所の原子炉モジュールに対して、能動的な電源供給を遮断して崩壊熱を受動的に除去できるかどうかを調べる2つの安全テストを実施した。各ユニットの温度と原子力の反応から、能動的な介入なしに自然に冷却できることが確認された。「テストの結果は、商業規模の固有の安全性の存在を初めて証明した」と、ジュール誌に掲載された研究結果では述べられている。

HTR-PMプラント(画像:清華大学)

 

報告書:オーストラリアはSMR市場が成熟するまで待つべきだ

オーストラリア科学技術アカデミー(ATSE)の新たな報告書「小型モジュール炉 - 技術とオーストラリアの状況の説明」によると、最もリスクの低い選択肢は、2040年代にSMR技術の成熟市場が出現するまで待ってから、その技術をオーストラリアの低炭素エネルギーミックスに導入することだという。しかし、オーストラリアの野党党首ピーター・ダットン氏は、オーストラリア初のユニットは2030年代末までに稼働する可能性があると述べている。

7/24、マスウェルブルックを訪問したダットン氏の写真(画像:ピーター・ダットン/Facebook)

 

KHNP、チェコの原子炉の契約交渉を開始

優先入札者に選ばれてから1週間後、韓国水力原子力発電(KHNP)は、チェコ共和国で少なくとも2基の新規原子力発電所の契約交渉を開始したと発表した。契約締結は2025年3月を目標としている。7/17、チェコ政府による少なくとも2基の新原子炉入札でKHNPが勝者となったと発表していた。KHNPはAPR1000を提案しており、7/22に「チェコ共和国との交渉手続きに迅速かつ緊密に対応する」交渉対応チームを立ち上げたと発表した。チームは7/24日にチェコ共和国で契約交渉の準備会議を開催し、今後の契約交渉計画について話し合い、「本格的な契約交渉を開始」した。初号機の契約は2024年中に最終決定され、2025年3月末までに締結される予定である。初号機の試運転は2036年、営業運転は2038年を目標としている。

チェコ共和国で交渉が開始(画像:KHNP)

 

ロパワーとフルアーが SMR プロジェクトの FEED 2 契約を締結

ルーマニア国営原子力発電会社(SNN社)とプロジェクト会社ロパワー(RoPower) ニュークリア は、フルアー社とドイチェシュティでの小型モジュール炉(SMR)プロジェクトの「フロントエンド・エンジニアリングおよび設計フェーズ 2 (FEED2)」契約を締結した。FEED 2 契約に基づき、フルアーはロパワー・ニュークリアにプロジェクトの実施に必要な設計およびエンジニアリング役務を提供する。契約終了時には、コスト見積とスケジュールが更新され、最終的な投資決定に必要な安全性とセキュリティの分析も行われる。ルーマニアのSMRプロジェクトは、NuScale 技術を使用して、ドイチェシュティの旧石炭火力発電所サイトに6モジュールを設置し、各モジュールの定格電気容量は7万7,000kWで、46万2,000kWを目指す。SMRプロジェクトでは、施設の60年間の寿命中には、施設の運転・保守雇用に加え、約200人の正規雇用、1,500 人の建設雇用、2,300人の製造およびコンポーネント組立雇用、およびが創出されると推定されている。

署名式は、米国DOE(エネルギー省)が主導する「大西洋横断エネルギー・気候協力パートナーシップ(P-TECC)」サミットで行われた。(画像:SNN)

 

ブラジル・アングラ3号機のパブリック・コンサルへの回答期限を延期

ブラジル原子力発電公社エレトロニュークリアは、アングラ3号機の工事完了に向けた入札契約案に関する協議への回答の公表期限を45日間延長した。エレトロニュークリアは、この延期は「パブリック・コンサルテーション期間中に受け取ったご意見の量​​と性格による」と述べた。エレトロニュークリア社は、入札プロセスへの関係者の参加を前向きに評価しており、期限の延長が同社の計画に影響を及ぼさないことを強調している。国立経済社会開発銀行(BNDES)の支援を受けて行われたパブリック・コンサルテーションでは、エンジニアリング、調達、建設を含むサービスの提案パラメータに対する改善案が求められた。同社は8/19までに結果を公表する予定である。

アングラ3号は現在約65%完成している(画像:エレトロニュークリア)

 

米ネクステラ、デュアン・アーノルド・プラントの運転再開を評価

米国のネクステラ・エナジー社は、二酸化炭素を排出しないエネルギーへのニーズの高まりに対応するため、恒久停止したアイオワ州のデュアン・アーノルド原子力発電所(BWR-4、60万kW)の運転を再開させる可能性がある。同原発は、暴風雨の被害と主要顧客であるアライアント・エナジーの喪失により、予定より2ヶ月早く2020年に運転を停止した。ジョン・ケッチャムCEOは、同原発を運転再開させるかどうかの判断は、実質的にリスクのないプロセスを確保できるかどうかにかかっていると述べた。

(画像:パブロ・ゴンチャール | SOPA Images | Lightrocket | Getty Images)

 

テキサス工科大とナチュラが溶融塩炉プロジェクトで提携

テキサス工科大学の「テキサス州精製水コンソーシアム(TxPWC)」は、ナチュラ・リソーシズ社と提携し、パーミアン盆地の一部にディスパッチャブルな電力を供給するための商用溶融塩炉を開発する。2021年に設立されたTxPWCは、処理済精製水の有益な利用に関するガイダンスを提供する。

(画像:テキサス工科大)

 

意見記事:米国は海外での原子力発電所建設の機会を追求すべき

ADVANCE法の署名により、米国企業は原子力技術をより容易に輸出できるようになり、米国にとって経済的機会と地政学的影響力の強化が期待される。この進展は、韓国のKHNPがチェコ共和国での原子力発電所建設に173億ドルの契約を獲得したことに続くものであり、米国も同様の機会を追求すべきだと、「独立女性フォーラム(IWF)」のペイジ・ランバーモントは書いている。新法は、NRC(米国原子力規制委員会)が技術輸出許可を承認することを可能にし、他国が原子力技術を中国やロシアのような国に依存するのを減らすように設計されている。

(画像:IWF)

 

カンザス州立大学のエンジニアが高温センサーを開発

カンザス州立大学の技術者たちは、米国NRC(原子力規制委員会)から50万ドルの助成金を受け、可搬型炉心の高温に耐えるセンサーの開発に取り組んでいる。ウォルター・マクニール氏は、「新しく登場した高温原子炉は、極めて強い有害放射線と、時には800℃を超える動作温度を併せ持つ。我々のチームは、マイクロポケット核分裂検出器の高温の影響を緩和し、装置を比類のないレベルの頑健さと生存率を実現する。

カンザス州立大学のエンジニア、ウォルター・マクニール氏 (カンザス州立大学)

 

英国がHALEUデコンバージョンコンペを開始

英国政府は、国内の商業用HALEUデコンバージョン(訳注:濃縮六フッ化ウランガスを化学処理によりウラン酸化物ないしウラン金属とする)施設の開発を支援するために、最大7,000万ポンド(138億円)の資金獲得コンペを開始した。HALEUデコンバージョンコンペは、2031 年までに英国で HALEU 生産能力を実現することを目指して 1 月に開始された 3 億ポンドの英国HALEUプログラムの一部。英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省 (DESNZ) は、この投資は HALEU の国内生産を支援するものであり、2050年までに最大 2400万kWの原子力発電容量を実現し、英国の電力需要の約 25% を供給する計画の一部であると述べた。5月政府はこの資金の最初のトランシェを発表し、ウレンコ社に1.96億ポンドを授与して、2031年の操業開始を目標とする、初の商業規模でのHALEU濃縮機能実現を図る。今回のコンペで具体的に利用できる助成金は、商業規模の酸化物 HALEU酸化物へのデコンバージョン施設の設計と建設、および商業規模のHALEU金属へのデコンバージョン施設の設計を支援することを目的としている。

米国のアイダホ国立研究所(INL)で製造された HALEU 燃料ペレット (画像: INL)

 

NANOのウォーカーCEO、マイクロ原子炉技術と燃料について語る

NANOニュークリア・エナジー社は、米国で初めて上場を果たした可搬型マイクロ原子炉企業であり、ZEUSとODINの製品で知られている。ジェームズ・ウォーカーCEOは、同社の子会社がHALEU燃料の信頼できるサプライチェーンをどのように構築しているか、またマイクロ原子炉ZEUSの完全密閉炉心設計がどのように「複雑なメンテナンス手順を減らし、原子炉のダウンタイムを減らす」ことができるかについて語る。

ジェームズ・ウォーカーCEO(NANOニュークリア・エナジー)

 

世界初の核融合発電プラントは「英国のNASA」

ノッティンガムシャー州は、「英国のNASAの瞬間 」と称される世界初の核融合発電プラントを建設する予定だ。英国インダストリアル・フュージョン・ソリューションズ(UKIFS)社と英国原子力公社(UKAEA)が主導する「核融合エネルギー生産のための球形トカマク(STEP)」プロジェクトは、2040年までに新しいクリーンなエネルギー源を生産することを目標としている。プラントはウェスト・バートンA発電所跡地に建設され、雇用を創出し、AIやエンジニアリングなどの分野における技術的成長を促進することが期待されている。

ノッティンガムシャーは、この技術がクリーンエネルギーを提供できることを証明する世界的な競争に勝つことが期待されている(画像:UKAEA)