• バイデン氏の撤退でハリス氏のエネルギー実績に注目が集まる
  • ワイオミング州住民、Natrium炉に関するNRC会合で懸念事項を指摘
  • 韓国と米国が海上SMRを研究する提携
  • GA、炭化ケイ素燃料被覆材の開発を進める
  • 原子力イノベーションフォーラム、目標を具体的行動に移すことに焦点を当てる
  • 米FERC新委員による影響を専門家が考察
  • 先進原子炉のHALEU利用追求で核拡散に懸念
  • マラソン社、トリチウム不足に対処するプロセスを開発
  • シャイン、核融合への道筋でのアイソトープ製造に注力
  • 仏ANDRA、極低レベル放射性廃棄物処分場CIRESへの処分量増量を承認
     

バイデン氏の撤退でハリス氏のエネルギー実績に注目が集まる

カマラ・ハリス副大統領は、ジョー・バイデン大統領よりも進歩的なエネルギーの実績を持っているが、彼女が民主党の大統領候補指名を獲得した場合、それが有権者にどのように作用するかは不明である。環境保護主義者の中には、気候変動の影響がますます地球をむしばんでいく中、温室効果ガス排出削減というバイデンの努力をほぼ引き継ぐだろうと予想するハリスに、すでに肩入れしている者もいる。

カマラ・ハリス副大統領(左)とジョー・バイデン大統領が5/9、ホワイトハウスのイーストルームで行われたイベントに到着。エヴァン・ヴッチ/AP

 

ワイオミング州住民、Natrium炉に関するNRC会合で懸念事項を指摘

米国NRC(原子力規制委員会)は、テラパワー社のNatrium炉型原子力発電所の環境審査を行うにあたり、ワイオミング州ケメラー市民を対象とした公開会合を開催した。懸念事項としては、地下水への潜在的な影響や放射性物質の放出に対する安全対策などが挙げられている。NRCは、2025年7月にドラフト環境影響評価書(DEIS)を、2026年5月に最終版(FEIS)を発行する予定である。

2024/7/16にケメラー市内で行われた公開会議でNRC職員に意見や質問をする同市在住のマーシャル・コーウィン氏(ダスティン・ブレイズフェー/ワイオファイル)

 

韓国と米国が海上SMRを研究する提携

米国船級協会(ABS)と韓国海洋科学技術院附属船舶海洋プラント研究所(KRISO)が提携し、小型モジュール炉(SMR)駆動船と浮体式SMR発電プラットフォームの商業化を推進に向け協力する。ABSは、SMR動力船の設計に適用される規制ガイドラインと国際基準の分析を提供すると述べた。KRISOは、船体と推進システムの概念設計に加え、船舶としての統合及び原子力安全解析の枠組の開発など、SMR動力船のコア技術を開発する。さらに、KRISOは、島嶼地域に安定した電力を供給できる商業化モデルとともに、浮体式SMR発電プラットフォームを設計する。

釜山で最近行われたチーム会議に出席した ABS と KRISO の代表者 (画像: ABS)

 

GA、炭化ケイ素燃料被覆材の開発を進める

ジェネラル・アトミクス(GA)社は、加圧水型原子炉向けに設計された炭化ケイ素複合材SiGA製の全長被覆管の初のバッチを製造した。同社は、現在使用されている材料よりも高い温度に耐えられる核燃料棒を開発している。ジェネラル アトミックス エレクトロマグネティック システムズ (GA-EMS) は、米国DOE(エネルギー省) の事故耐性燃料(ATF)プログラムを通じて、炭化ケイ素燃料被覆技術を開発する契約を結んでいる。炭化ケイ素複合材SiGAは、その硬さと超高温耐性により、何十年も産業用途で使用されてきた。GA-EMSの技術では、被覆材に炭化ケイ素繊維を組み込む。この組み合わせにより、ジルコニウム合金の融点より約 500 °F(約280℃)高い 3800°F (2093°C) までの温度に耐える、頑健性、耐久性の高い人工炭化ケイ素複合材となる。GA-EMS は、厳格な原子力発電所グレードの要件を満たす長さ 6 インチ (15 cm) の SiGA短尺棒と長さ 3 フィート (91 cm) の被覆管試作品をすでに作成しており、DOE のアイダホ国立研究所(INL)で照射試験に供する予定。最近の研究で、このプロセスが全長 12 フィート (3.6 m) の全長燃料棒にまで拡張可能であることが実証されている。

「SiGA織り」の炭化ケイ素複合材核燃料被覆材(画像:GA)

 

原子力イノベーションフォーラム、目標を具体的行動に移すことに焦点を当てる

原子力イノベーションのためのグローバル・フォーラム(GFNI)」では、業界のリーダーたちが、エネルギー安全保障と気候変動に対処するためにイノベーションを加速する方法について議論し、目標を行動に移すためのフレームワークなどのリソースを提供した。IAEA(国際原子力機関)のラファエル・マリアノ・グロッシ事務局長は、ビデオを通じて参加者に、「潮流は原子力に傾いている。私たちは、この1世代以上の間になかったチャンスを目の当たりにしている。」と語った。

2024GNFIは6/24~27、米国フロリダ州マイアミで開催(写真:EPRI)。

 

米FERC新委員による影響を専門家が考察

米連邦エネルギー規制委員会(FERC)が、重要な送電計画やコスト配分規則を議題として下半期に突入する中、専門家たちは、3人の新委員の就任が活動にどのような影響を与えるかについて推測している。元FERC委員長のリッチ・グリック氏は、人事が加わると「リズムが変わり、全員がスピードを上げて他の人のリズムに慣れるまで時間がかかる」と指摘する。

写真:エズメ・ハウランド氏。

 

先進原子炉のHALEU利用追求で核拡散に懸念

先進型原子炉における濃縮度5%超低濃縮ウラン(HALEU)の使用が、HALEUが核兵器に使用される可能性について、米国で懸念を呼び起こしている。専門家の間でも意見が分かれており、連邦議会やDOE(エネルギー省)に核拡散リスクの評価を求める声もあれば、予防措置は講じられているとする声もある。この問題は、気候変動に対する回答として先進的な原子力が浮上するにつれて重要性を増している。

2006年、鉱山でウランイエローケーキのドラム缶を密封する作業員。写真:ゲッティイメージズ

 

マラソン社、トリチウム不足に対処するプロセスを開発

マラソン・フュージョン社は、水素から不純物をろ過する「超浸透(superpermeation)」と呼ばれる40年来の技術を改良することで、多くの核融合炉が求めているトリチウムの不足への対処を目指している。マラソン社は590万ドルのシード資金を調達し、DOE(エネルギー省)と、脱炭素に関する投資および慈善活動などを行うブレークスルー・エナジーのフェロー・プログラムからの支援を受けている。

画像クレジット: John D / Getty Images

 

シャイン、核融合への道筋でのアイソトープ製造に注力

シャイン・テクノロジーズ社は、核融合技術を用いた中性子による医療用アイソトープ製造を目指しており、最終的な目標は商業的に利用可能な核融合発電である。ルテチウム-177を生産し、モリブデン-99への拡大を計画しているシャインは、アイソトープ市場での競争に直面しており、現在の成功は、その収益性の高い事業へのこだわりを見せる同社への圧力を生み出し、同社のエネルギーへの野心に影響を与える可能性がある。

ルテチウム177を含む液体サンプルを扱うために、ホットセル内に届く多関節マニピュレーターを使用するシャイン・テクノロジーズの技術者。写真:NARAYAN MAHON

 

仏ANDRA、極低レベル放射性廃棄物処分場CIRESへの処分量増量を承認

フランスの放射性廃棄物管理機関ANDRAは、処分面積を増やすことなく、CIRES極低レベル放射性廃棄物処分施設の認可処分容量を増やす承認をオーブ県から取得した。2003年にモルヴィリエに開設されたCIRES(は、65万㎥の極低レベル放射性廃棄物(VLLW)(主に弱く汚染された瓦礫、土、金属くずなどの物質)を、トランシェ1、2、3と呼ばれる3つの貯蔵エリアに受け入れるよう設​​計・認可されている。2022年末までに、CIRESは総認可貯蔵容量の69.4%に達した。廃棄物生産者が発表した今後数年間のVLLW搬入予測を考慮すると、46ヘクタールのサイトは、2028~2029年頃に認可貯蔵容量に達すると予想されるが、ANDRAが発行した放射性物質と廃棄物の国家目録によると、2050年から2060年までに、主に現在運転中の原子力施設の解体で、210~230万㎥のVLLWが生成される見込みである。ANDRAは、2023年4月に、CIRESの認可貯蔵容量を増やすための環境認可申請書類をオーブ県に提出した。

環境認可手続きは 3 段階。第 1 段階では、環境当局を含む政府機関がプロジェクトを審査。第 2 段階では、一般市民と地方自治体の意見を聴取。第 3 段階では、調査委員の報告書と「合理的な結論」に基づいて、当局が承認した。認可により、CIRESは、合計95万㎥の VLLW を、処分面積を増やすことなく収容できる。これは、2003年に操業して以来、処分セルにさまざまな改良が加えられたことで可能になった。

CIRES(画像:ANDRA)