• タス通信:EU、パクシュII原発プロジェクトへのロシア制裁を免除、文書での確保は初
  • ウクライナ・エネルゴアトムのトップが日本国大使と原子力協力の可能性につき協議
  • レポート:新しいCANDU設計はカナダのGDPを押し上げる可能性あり
  • スロベニアのGENエネルギア、国民投票前にクルスコ原発2期増設の研究結果を公表予定
  • 米ワシントン州民主党、反原発綱領を否決
  • WNISRコーディネータ:世界の原子力発電はどのように進んでいるのだろうか?
  • ワシントン・ポスト:成長する原子力産業の鍵は商業的実行可能性
  • カナダ電力会社、原子力発電所の停止を理由に20%の料金値上げを要求
  • カナダ・マクマスター大の原子炉が20年の認可更新
  • ロッシング鉱山、2036年以降の操業を見据える
  • IAEAグロッシ事務局長、ブラジルの原子力開発への貢献を称賛
  • 原子力技術はワインの原産地証明にも有望

タス通信:EU、パクシュII原発プロジェクトへのロシア制裁を免除、文書での確保は初

6/24,ブリュッセル発、タス通信―欧州連合(EU)は、ロスアトムのプロジェクトによるハンガリーのパクシュⅡ期原子力発電所の建設をいかなる禁止事項や制限事項からも免除することを初めて文書で記録した。EU官報に掲載されたロシアに対する第14次制裁措置の説明書(訳注:第(44)項)には「欧州連合は原子力安全への脅威を回避することに尽力している。したがって、この規則で規定されている措置は、建設中のパクシュII期原子力発電所の計画、建設、エンジニアリング、試運転、保守、燃料供給を損なうことを意図したものではない。このため、規則(CFSP)2024/1744は、パクシュII期プロジェクトについて、この規則で規定されている禁止事項の横断的免除を導入し、そのような活動を報告する義務を課している」と記載されている。

パクシュⅡ期原子力発電所の建設 写真: REUTERS/ Marton Monus

 

ウクライナ・エネルゴアトムのトップが日本国大使と原子力協力の可能性につき協議

6/25、ウクライナ国営原子力発電会社エネルゴアトムのペトロ・コティンCEOは、松田邦紀駐ウクライナ日本国特命全権大使と会談した。会議では、ウクライナ領土内にある原子力施設の保護の確保や原子力分野における各国間の協力の強化などが話題となった。コティンCEOは、エネルゴアトムが既設原子力施設の保護に最大限の努力を払うと同時に、フメリニツキー原子力発電所の新ユニット建設に積極的に取り組んでいることを強調。松田大使は、ウクライナでの原発新設、すなわち米国AP1000技術に基づく発電所と小型モジュール炉の展開を支持すると表明。大使によると、日本企業もこのプロセスに参加できるという。大使は、ゼレンスキー大統領の平和フォーミュラに基づくさらなる協力の重要性、特に第一のポイントである「放射線と原子力の安全性」の重要性を強調し、ウクライナ政府とIAEAの双方による原子力安全・核セキュリティ確保に向けた取り組みを日本が引き続き支援することを改めて確約した。

(写真:エネルゴアトム)

 

レポート:新しいCANDU設計はカナダのGDPを押し上げる可能性あり

4ユニットからなるCANDUモナーク発電所の建設は、プロジェクトの存続期間中にカナダのGDPを900億カナダドル(10兆5,000億円)以上押し上げ、数千の雇用を創出する。また、海外に建設されるユニット1ユニットあたり、GDPに48億カナダドル(5,600億円) の影響を与えると、カナダの政府系調査機関であるカナダ協議委員会(CBoC:Conference Board of Canada)にアトキンス・レアリスが委託した新しい報告書は述べている。CANDUモナークの 4 基の製造、エンジニアリング、建設段階で、カナダの GDP に 409 億カナダドル以上、運用段階では 495 億カナダドル以上の影響を与えるとされている。また、プロジェクトの期間中、市、州、連邦政府全体で 291 億カナダドルの追加税収が得られるという。

アトキンス・レアリスは2023年11月、第3+世代原子炉設計CANDUモナークを発表。天然ウランを燃料とするこの原子炉設計は、現在運転中のCANDUユニットの設計に基づいており、100万kWというより大きな出力、発電コストの改善、70年という長期運転、環境への影響を最小限に抑える持続可能な設計原則を特徴としている。

(画像:CBoC)

 

スロベニアのGENエネルギア、国民投票前にクルスコ原発2期増設の研究結果を公表予定

スロベニアのGENエネルギア社は、提案されているクルスコ原発2期増設(JEK2)の予定地は地震活動の観点から適切であると結論付ける分析結果を公表した。また、2024年後半に原子力に関する国民投票が行われる前に公表する予定の一連の研究結果の概要も明らかにした。GENエネルギアは、提案されたプロジェクトに関する情報を提示し、質問に答えるために、全国で情報ロードショーも実施中。専用の jek2.si ウェブサイトもある。

(画像:jek2.si ウェブサイト)

 

米ワシントン州民主党、反原発綱領を否決

米国ワシントン州民主党は、先ごろ開催された党大会において、原子力発電に関する正式な立場をとらないことを決議した。代議員は、原子力発電を州の再生可能エネルギー・ミックスの一部とすべきかどうかを議論し、原子力を「気候変動の解決策ではない」として州が小型モジュール式原子炉のためにクリーン・エネルギー資金を使うべきではないとする決議案を否決した。

1972 年のキャプション: 先週、ワシントン州ロングビューの 6 マイル南で建設中のポートランド ジェネラル エレクトリック カンパニーのトロージャン原子力発電所の冷却塔に最終的なコンクリートを打設した。2億4,200 万ドルの費用がかかり、国内最大の冷却塔となる。トロージャン原子力発電所は 1990 年代初頭に閉鎖された。冷却塔は 2006 年に解体された。(ジョナサン ブラント / ザ スポークスマン レビュー)

 

WNISRコーディネータ:世界の原子力発電はどのように進んでいるのだろうか?

過去20年間で、104基の原子炉が稼働し、102基が停止した。2019年以降の着工35件のうち22件を中国が占め、残りのプロジェクトはロシアが立ち上げた。原子力発電所は80年から100年運転できるという主張は誇張かもしれないが、51年以上運転しているのは16基しかなく、60年運転した原子炉の経験も世界にはない、と毎年恒例の世界原子力産業現状報告書(WNISR)をコーディネートしているアナリストのマイクル・シュナイダーは言う。

イングランドのヒンクリーポイントC原子力発電所の建設 写真:キン・チュン/AP

 

ワシントン・ポスト:成長する原子力産業の鍵は商業的実行可能性

電力需要は伸びると予測されており、原子力は米国における非炭素ベースの最大のエネルギー源である、とワシントン・ポスト紙のロバート・ゲベルホフ副編集長は書いている。連邦政府の新政策は原子力産業を復活させることを目指しており、ADVANCE法は許認可を合理化するものだが、「多くのことは、高度な原子力技術が商業的に実行可能になるかどうかにかかっている」とゲベルホフ氏は書き、アメリカの商業用原子炉の平均運転年数は42年で、最近新たに建設された原子炉は1基だけ(訳注:ボーグル4号を指す。ボーグル3号も最近だが、含めていないものと思われる)だと指摘する。

ボーグルの新設原子炉(写真:ワシントン・ポスト)

 

カナダ電力会社、原子力発電所の停止を理由に20%の料金値上げを要求

カナダのニュー・ブランズウィック(NB)パワー社は、2022年までの5年間の平均故障率が年間約19日であったことから、ポイント・ルプロ―原子力発電所で年間29日間の故障を見込んでいる。故障の主な原因は、2012年の大改修以来稼動し続けている非原子力発電設備である。NB州は2年間で20%の電気料金値上げを望んでいるが、林業会社J.D.アービングの代理人弁護士は、電力会社は発電所の予測性能を過小評価していると述べている。

NBパワー社のロリ・クラーク社長とダレン・マーフィーCFOは休憩中、同社の料金聴聞会を退席。両幹部は、ポイント・ルプロー原子力発電所の今年と来年の業績不振の予測は、最近の経緯を考えると現実的だと述べている(パット・リチャード/CBC)

 

カナダ・マクマスター大の原子炉が20年の認可更新

カナダのオンタリオ州ハミルトンにあるマクマスター大学のキャンパスにあるマクマスター原子炉(MNR)は、20年間の認可更新を受けた。1959年に建設されたこの原子炉は、前立腺がんなどの治療に使われる医療用ラジオアイソトープであるヨウ素125(I-125)の世界有数の供給元であると、同大学は大学広報サイトにポストしている。カナダ原子力安全委員会(CNSC)による認可更新により、同施設への継続的な投資と拡張が可能になり、新しい医療用アイソトープ製品、材料科学プログラム、教育機会をサポートできるようになると大学は述べた。

MNRはCNSCから20年間の運転認可を付与された。(写真:マクマスター大学)

 

ロッシング鉱山、2036年以降の操業を見据える

ナミビアのロッシング・ウラン鉱山の2023年の生産量は2022年よ​​り10%増加し、操業計画通りであり、ロッシング・ウラニウム社は鉱山の寿命を2036年以降も延ばすことに注力していると述べている。同社は6/18、2023年の「持続可能性と業績報告書」を正式に発表し、2023年の生産に関する最新情報を提供した。ロッシングは2023年に640万ポンドU3O8(2462tU)を生産し、690万ポンドU3O8を販売。約180万ポンドは西側の転換事業者に出荷され、北米、アジア(中国を除く)、欧州、中東、アフリカの顧客に販売された。370万ポンドは中国に出荷、販売された。さらに140万ポンドは、その年の急激な価格高騰を利用して、スポット市場で非公益事業顧客(トレーダーとファンド)に販売された。同社は、大株主である中国鈾業(CNUC:China National Uranium Corporation)を傘下に持つ中国核工業集団公司(CNNC)との販売契約に基づき、スポット市場価格の恩恵を受けていると述べた

ロッシングの露天掘り採掘作業(画像:ロッシング・ウラニウム)

 

IAEAグロッシ事務局長、ブラジルの原子力開発への貢献を称賛

IAEA(国際原子力機関)のラファエル・マリアノ・グロッシ事務局長は、世界の原子力分野におけるブラジルの重要性を強調した。先週の同国訪問中に、同氏はブラジルのエネルギー・原子力研究所(IPEN)をIAEA協力センターに指定する協定に署名した。

グロッシ事務局長(左)とブラジル原子力委員会(CNEN)ホンジネリ委員長(右)による協定書への署名。IPEN-CNEN の IAEA 協力センターとしての指定が正式に承認される(写真:ダグラス・トロウファ/CNEN)

 

原子力技術はワインの原産地証明にも有望

ワインのトリチウム濃度を測定することで、産地偽装を見破り、合成化合物の使用を抑止できるかもしれない。トリチウム濃度は、降水量の季節的・地域的変動を反映しており、「すべての環境区画からのトリチウムの適切な推定が実現すれば、ナチュラルワインの原産地を決定することができる」と研究者たちは書いている。

2019年から2023年までの期間における降水中のトリチウム放射能と降水量(画像:Irina Vagnerら提供)