• 中国の産業用原子力蒸気プロジェクトが始動
  • 米国上院、先進原子力導入を加速する法案を可決
  • 韓国、SMR 製造産業コンプレックスを計画
  • コロケーションはデータセンターと原子力発電所にメリット
  • ITER が提案する新たなタイムライン - 2035 年に運転の初期段階
  • 電源としての核融合の可能性を示す実証プラント
     

中国の産業用原子力蒸気プロジェクトが始動

中国江蘇省の田湾原子力発電所で、中国初の産業用原子力蒸気供給プロジェクトが試運転を経て稼働を開始した。このプロジェクトは、近隣の石油化学工場に蒸気を供給する。「和気一号」として知られるこのプロジェクトは、中国核工業集団公司(CNNC)の子会社である江蘇核電と連雲港市徐圩新区の連雲港石油化学工業基地が共同で開発した。このプロジェクトでは、ロシアから供給された2基のVVER-1000ユニットである田湾発電所3,4号機の二次冷却系から蒸気が抽出される。多段熱交換を経た後、蒸気は断熱された地上パイプラインを介して連雲港石油化学工業基地に輸送され、工業生産と利用に供される。このプロジェクトの杭基礎の建設は2022年2月に始まり、工業用蒸気施設のファースト・コンクリート打設は2022年5月に行われた。田湾発電所には4基の蒸気変換装置が装備されている。原子力発電所から排出される工業用過熱蒸気の圧力は1.8MPa、定格流量は毎時600トンである。

(画像:CNNC)

田湾の工業用蒸気施設(画像:CNNC)

関連報道:

https://www.reuters.com/business/energy/china-produces-first-nuclear-generated-steam-petrochemicals-plant-2024-06-19/ 

 

米国上院、先進原子力導入を加速する法案を可決

超党派の「クリーンエネルギーのための多用途先進原子力導入促進法(ADVANCE)」は、規制承認プロセスを合理化する措置を含む、新たな先進的な原子力技術の開発と展開を奨励し、支援することを目指している。6/18に88対2の票数で上院が同法案を可決した。この法案は、5月初めに下院で393対13の票数で可決されており、今や大統領の署名を待つばかりとなった。ADVANCE 法は、とりわけ、NRC に新しい原子力技術の許認可手続きを迅速化する方法を検討するよう指示している。この法律は、先進原子炉技術の認可を求める企業の規制コストを抑制するとともに、次世代原子炉技術の導入を成功に導くための「賞(prize)」を創設する。また、事故耐性燃料と先進核燃料の認証と許認可能力を強化するよう NRC に指示する。

(画像: 米国議事堂建築監)

関連報道:

https://thehill.com/homenews/4728514-senate-nuclear-power-package-biden/ 

https://www.engadget.com/congress-passes-sweeping-pro-nuclear-energy-bill-140035295.html?src=rss 

https://www.ans.org/news/article-6131/senate-passes-nuclear-advance-act-bill-heads-to-biden/

 

韓国、SMR 製造産業コンプレックスを計画

韓国の尹錫悦大統領は、同国慶尚北道南東部の慶州市に小型モジュール炉 (SMR)製造の 産業ハブを建設する計画を発表した。政府はまた、同省に水素産業のハブを設立することを目指している。大統領は、政府が「世界中で競争的に開発が進められているSMR及びSMR製造技術を先制的に確保できるよう」、慶州に3000億ウォン(340億円)規模のSMR国家産業コンプレックスを建設することを支援すると発表した。大統領は、産業通商資源部が2025年までに800億ウォン(91億円)相当の基金を創設し、同国の原子力発電部門の成長を支援すると述べた。「慶尚北道がSMR製造能力を明確に向上させ、世界的なSMR製造拠点に成長できるよう、技術開発や試作機製造などのインフラ構築を積極的に支援する」と尹氏は述べた。

国民生活討論フォーラムで演説する尹大統領(写真:韓国大統領府)

 

コロケーションはデータセンターと原子力発電所にメリット

S&Pグローバル・レーティングスの調査ノートによると、米電力研究所(EPRI)は、2030年までに米国内のデータセンターにおけるエネルギー需要が倍増し、コンステレーション・エナジー・グループ、PSEGパワー、ビストラなどの原子力発電事業者にビジネスチャンスがもたらされると予測している。タレン・エナジーのように原子力発電所の近くにデータセンターを建設することで、発電事業者は長期契約を結ぶことができ、データセンター運営者は送配電網の料金を節約できる、とS&Pは述べている。

ホープ・クリーク原子力発電所(Peretzp による - ヨットから撮影)

 

ITER が提案する新たなタイムライン - 2035 年に運転の初期段階

国際熱核融合実験炉 (ITER) の改訂されたプロジェクト計画では、「2035 年の重水素 - 重水素(D-D)核融合運転とそれに続く完全な磁気エネルギーおよびプラズマ電流運転を含む、科学的かつ技術的にロバストな運転の初期段階」を目指している。6/19、20に開催された第34回ITER評議会会議では、建設の進捗状況と、プロジェクトベースラインの改訂案が発表された。この改訂案では、「可能な限り迅速に実質的な研究活動を開始することを優先する。これは、トカマクの組み立てステージを統合し、組み立て前試験を強化し、機械の組み立てと試運転のリスクを軽減することで達成される。この組み立てのフェーズを通じて、プロジェクトは、世界的な核融合イノベーションプログラムに関連する重要な技術的マイルストーンを継続的に達成していく」とされている。

2023年9月の巨大なITER建設現場(画像:ITER/EJF Riche)

 

電源としての核融合の可能性を示す実証プラント

コモンウェルス・フュージョン・システムズ社、ヘリオン・エナジー社、ジェネラル・フュージョン社によって、核融合発電の実現可能性を示すパイロット・スケールの核融合炉が建設され、後に続く大規模な発電所への道が開かれようとしている。米国、英国、ドイツ、日本、その他の国々は、世界的な電力需要の高まりの中で、核融合を推進しテストする戦略を策定しており、核融合産業協会が行った世論調査では、核融合企業のリーダーの半数以上が、2030年代には核融合エネルギーが公共送電網に送られるようになると答えている。

(画像イラスト:ANJALI NAIR, GETTI IMAGES)