6/11,冷却水ポンド隣接エリアで、地雷1個が爆発していた。この溜め池を囲っている土手が決壊すると、ただのくぼ地になってしまったカホフカ貯水池跡地に向かって、池の水が流出する。きわめて憂慮すべき事態だ。

 

IAEA(国際原子力機関)は、6/13、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)でチームを交代させた。IAEAが2022年9月に同発電所に常駐して以降、20チームの専門家がウクライナ紛争の最前線を越えて同発電所にやって来たとラファエル・マリアノ・グロッシ事務局長は述べた。

 

このローテーションは、6/15、16に予定されているスイス主催のウクライナ平和サミットを前に、グロッシ事務局長がスイスのイグナツィオ・カシス外相と会談した翌日に行われた。グロッシ事務局長はカシス外相に、軍事紛争が進行する中で原子力事故や放射線事故を防ぐIAEA独自の役割について説明した。

 

「IAEAは、ザポリージャ原子力発電所を含むウクライナの原子力施設に常駐している唯一の国際機関だ。我々は引き続き、世界に技術支援と独立した情報を提供していきます」とグロッシ事務局長は述べた。 「私は平和サミットに参加するすべての国に対し、他にはまねできないIAEAの独立した技術的役割を強化し、支援するよう強く求める」

 

現地では、ZNPPのIAEAチームから、過去1週間も数日にわたり、プラント近くを含む複数の場所で爆発音を聞いたと報告があった。彼らは、ZNPPの冷却水ポンドエリアに隣接して設置された地雷1個が6/11に爆発したことをプラント側に確認した。爆発による物理的被害や死傷者はなく、爆発の原因はIAEAチームに伝えられなかった

 

「プラントに極めて近接した場所で起きたこの直近の爆発は深刻な懸念であり、すでに不安定な状況をさらに悪化させている」とグロッシ事務局長は述べ、更に「ZNPPの原子力安全・核セキュリティを損なうことは許されない」と述べた。

 

6/10、IAEA門家らは、近隣のエネルホダル市にある変電所の1つを実地検分した。その目的は、ZNPP側によると6/8に発生したとされる砲撃の影響を観察することだった。砲撃の結果、ZNPPとエネルホダルの間の主要通信ハブがあるエネルホダル市議会ビルに電力を供給する変電所が火災と被害を受けていた。ZNPP側の確認では、被害によって通信回線が途切れたことはなかったという。

 

前週、IAEAチームは同発電所2号機の安全系1トレンの試験が行われているのを視察した。ZNPPののような型の原子力発電所にはそれぞれ、安全系設備を構成する安全系トレンと呼ばれる3つの独立した冗長システムがある。計画されていた試験は、安全系トレンの1つへの通常の供給電源が失われた場合を模擬し、必要な電力を供給するために同じ安全系トレンに属する非常用ディーゼル発電機(EDG)が起動することを要求するものだった。チームはZNPP側からテストは首尾よく実施され、問題は確認されなかったとの報告を受けた。

 

過去1週間のZNPP側との会議では、IAEAチームは発電所の中央制御室で働くスタッフの数と資格について議論した。ZNPPでは、6ユニットすべてが低温停止状態にあるため、中央制御室で常時駐在を求められる最低人数は2人であるところ、シフトごとに3人の有資格職員を勤務させていることを確認した。

 

チームは、定期的なプラント・ウォークダウンの一環として、この週初めに4号機のポンプ場を実地検分した。そこでは、ZNPPの放水キャナルと取水キャナルの間の冷却水の流れを維持する循環水ポンプ1基が使用されている。循環水ポンプの運転は、ZNPP冷却水ポンドの全体水位に依存しているが、2023年6月にカホフカダムが破壊されて以来、水位は低下し続けている。IAEA専門家は最近、ZNPP側が、ザポリージャ火力発電所の放水キャナルの隔離ゲートの近くに水中ポンプを設置したことを知らされた。このポンプは、カホフカ貯水池から毎時100㎥の水を放水キャナルに汲み上げ、更にZNPP冷却水ポンドに給水することができる。6基の原子炉と安全系設備を冷却するために使用されている12か所のスプリンクラー・ポンドには、11基の地下水井戸から毎時約250㎥の水が供給され続けている。

 

この週、チームはZNPP乾式使用済燃料貯蔵施設で、6基すべての原子炉からの使用済燃料を収容する貯蔵キャスクの常時監視システムも視察した。

 

緊急事態の事前対策及び対応に関する取り組みは、どの原子力発電所でも原子力安全にとって極めて重要だ。IAEA チームは、5/15に同発電所で実施された緊急時対応演習の成果についてZNPP側と議論した。ZNPP側から、演習は目的を達成し、いくつかの貴重な教訓を得たとの確認があった。訓練中に特定された改善点に対するアクション・プランが実施に移されていく

 

ウクライナの他の原子力発電所 (フメリニツキー、リウネ、南ウクライナ、およびチョルノービリ) では、IAEA チームが引き続き定期的なウォークダウンを実施し、施設側との会議を開催して原子力安全・核セキュリティを評価している。チームからは、過去1週間、空襲警報を含む紛争の影響にもかかわらず、原子力安全・核セキュリティは維持されているとの報告があった。それでも、IAEAはこれら各発電所の外部電源に関する状況を非常に注意深く監視し続けている。ウクライナには運転中の原子炉もあり、(ZNPPと違って)核燃料の温度が高いため、外部電源が失われると深刻な事態になる可能性がある。

 

チームから、リウネ原子力発電所と南ウクライナ原子力発電所の原子炉1ユニットは計画保守と燃料取替のため停止したままである一方、南ウクライナ原子力発電所の別の1ユニットは、計画保守・燃料取替が安全かつ首尾よく完了したのを受け、運転を再開したとの報告があった。

 

過去2日間、IAEA専門家は、南ウクライナ原子力発電所で実施された大規模な緊急訓練を視察した。この訓練はフメリニツキー原子力発電所とリウネ原子力発電所も参加して行われた。

 

フメリニツキー、リウネ、南ウクライナのチームは、過去1週間ですべて交代した。

 

南ウクライナ原子力発電所での緊急時訓練(写真:エネルゴアトム)

 

ウクライナ国家原子力規制検査局(SNRIU)プレス(南ウクライナ原発での緊急時訓練):

https://snriu.gov.ua/news/fakhivtsi-derzhatomrehuliuvannia-vzialy-uchast-u-spilnomu-zahalnostantsiinomu-protyavariinomu-trenuvanni

 

エネルゴアトムプレス(南ウクライナ原発での緊急時訓練):

https://energoatom.com.ua/ua/post/1941

 

関連報道:

https://www.reuters.com/business/energy/ukraine-firm-completes-maintenance-3-nuclear-reactors-start-one-more-2024-06-13/

 

関連報道(ロシアメディア):

https://tass.ru/politika/21086997 

https://tass.ru/proisshestviya/21092837

https://ria.ru/20240613/zaes-1952560921.html

https://iz.ru/1711908/2024-06-13/na-zaporozhskoi-aes-proshla-rotatciia-missii-magate