IAEA理事会のサイドラインで、ウクライナ代表団とグロッシ事務局長の会談が行われた。

ウクライナのエネルギーインフラへのロシアの攻撃が続いており、ザポリージャ原発以外の運転中の原子力発電所への外部電源供給へのリスクの懸念が高まっている。

 

 

ウクライナの困難な原子力安全・核セキュリティ状況はこの週、IAEA(国際原子力機関)で再び注目を浴び、理事会はIAEAの新しい報告書に詳述されている最近の動向について議論し、ラファエル・マリアノ・グロッシ事務局長は同国のエネルギー大臣と会談した。

 

グロッシ事務局長とへルマン・ハルシチェンコ・エネルギー大臣は、6/6、IAEA本部での定例理事会の合間に会談し、ウクライナの原子力安全・核セキュリティを支援するIAEAの継続的な取り組みについて議論した。この週初めの理事会で、事務局長は状況に対する深い懸念が続いていることを明らかにしている。

 

ザポリージャ原子力発電所(ZNPP)の原子力安全・核セキュリティは、極めて不安定なままであり、ZNPPだけでなく運転中の原子力発電所にも外部電力を供給するために不可欠な変電所を含む、ここ数カ月のエネルギーインフラへの攻撃を受けて、ウクライナの他の場所でも原子力安全・核セキュリティが脆弱になる可能性があると、グロッシ事務局長はハルシチェンコ大臣との会談後に述べた。

 

原子力発電所(NPP)は、原子炉の冷却やその他の重要な原子力安全・核セキュリティ機能のために、外部電源への確実なアクセスを必要としており、これは原子力安全・核セキュリティの7つの柱で強調されている。しかし、ウクライナの電力網は紛争の影響を深刻に受けており、ZNPPはすべての電力系統への接続を何度も失っている。

 

「特にザポリージャ原子力発電所では、外部電源の状況が依然として非常に脆弱で、頻繁に停電が発生しやすい。しかし、ウクライナで運転中の原子炉では、核燃料の温度がもっと高いということを考えると、外部電源の喪失はより深刻な事態を招く可能性があり、現在の状況では、より広範な懸念事項にもなっている。6/6の会議でもハルシチェンコ大臣に伝えたように、我々は引き続きこの点について状況を非常に注意深く監視している」とグロッシ事務局長は述べた。

 

前週、ロシアのカリーニングラード市でロスアトムのアレクセイ・リハチェフ総裁と会談したグロッシ事務局長は、ウクライナのエネルギー大臣に対し、紛争により原子力安全・核セキュリティが危険にさらされている限り、ZNPPは再稼働しないという合意があることを改めて伝えた

 

「このような状況では、この大規模な原子力発電所を稼働させることは賢明ではない」と事務局長は述べた。

 

この週の理事会会合に先立ち、事務局長は、2022年2月に紛争が始まって以来のウクライナにおける原子力安全、核セキュリティ、保障措置に関して、2024/5/24までの3か月間の進展を網羅した第11回報告書を発表した。

 

この週、ZNPPでは、サイト駐在のIAEA専門家チームが、原子力安全・核セキュリティを監視するために定期的なウォークダウンを続けている

 

同時に、チームには、サイトから少し離れた場所での爆発音を聞こえ続けており、ZNPPが最前線にあることを常に想起させている。

 

下流のカホフカダムの破壊によりZNPPの冷却水供給が途絶えてから1年が経過し、チームはサイト内の冷却水ポンドを実地検分したところ、ダムが破壊される前よりも約1.5メートル低下した水位になっていることが確認された。

 

原子炉6基すべてが低温停止状態にある同発電所では、停止中の原子炉が必要とする冷却水を、サイト内のスプリンクラー・ポンドから得ており、スプリンクラー・ポンドに給水するために建設された11基の地下水井戸からの約250㎥/hが水源となっている。

 

IAEAチームは、6/3の理事会声明で事務局長が原子力安全・核セキュリティに潜在的なリスクをもたらすと強調したもう1つの領域である、発電所の保全活動を引き続き注意深く監視している。

 

これらの活動の一環として、IAEA専門家は750kV屋外開閉所を実地検分し、進行中の原子炉2号機の変圧器のリレー保護の保守作業などについて議論した。

 

専門家らは、2022年に損傷を受けて以来稼働していない3系統の750kV系統の1つで、開閉所コンポーネントの一部が撤去されているのを確認した。しかし、ZNPPは現時点では修理を完了する予定はない。紛争初期にサイト外で受けた損傷のため、系統自体が利用できない状態が続いているためだ。ZNPPは紛争前に4系統の750kV電力系を利用できたが、現在は1系統しか残っていない。

 

IAEAの専門家らは、西側諸国から供給され、紛争前に設置されていた開閉所機材は良好な状態にあるとの説明を受けた。ZNPP側はまた、西側諸国から供給されたスペアパーツのいくらかは、まだサイト内にも残っており、必要に応じてロシア連邦の供給業者を通じて同様の機器を注文できると述べた。

 

IAEAの専門家チームはまた、6号機の新燃料貯蔵施設2か所とタービン建屋も実地検分したが、今回も建屋の西側への立ち入りは許可されなかった

 

さらに、ZNPP側はIAEAの専門家に対し、サイト内外の放射線モニタリング・ステーションの状況を説明した。チームはサイト内の放射線モニタリング・ステーション4か所すべてが稼働中だが、サイト外の14か所のうち3か所は2022年の軍事活動の結果損傷したままであるとの説明を受けた。

 

ZNPP側は、人手による放射線モニタリング測定も実施しており、ロシア連邦の規制に準拠した新しい放射線モニタリング・ステーションと、原子力緊急事態または放射線緊急事態の際に使用するための可搬式放射線測定ラボを購入する計画があると述べた。

 

ウクライナの他の原子力発電所(フメリニツキー、リウネ、南ウクライナ)とチョルノービリ・サイト駐在のIAEA専門家らは、引き続き定期的なウォークダウンを実施し、原子力安全・核セキュリティを評価している。チームからは、過去 1 週間に数日にわたって空襲警報が鳴るなど、進行中の紛争の影響にもかかわらず、原子力安全・核セキュリティは維持されているとの報告があった。

 

リウネ原子力発電所と南ウクライナ原子力発電所の原子炉ユニット各1基は、計画保守と燃料取替のため、この1週間停止しており、南ウクライナ原子力発電所の別のユニット1基は計画停止中である。

 

左から、オレグ・コリコフ・ウクライナ国家原子力規制検査局長、ヘルマン・ハルシチェンコ・エネルギー大臣、ラファエル・マリアノ・グロッシIAEA事務局長、ペトロ・コティン・エネルゴアトムCEO(写真:グロッシ事務局長X)

 

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