• シャングリラ会合:ゼレンスキー大統領、原子力安全と戦争終結に中国の協力を要請
  • 従来炉および先進炉設計におけるシビアアクシデント研究の進展をレビュー
  • 先進的核燃料サイクルに関する科学的問題について議論
  • 科学者らが原子力施設の有害廃棄物を清掃する人間型ロボットを開発
  • 論説:ロシアの「放射性潜水艦」は北極圏にとって依然として脅威
     

シャングリラ会合:ゼレンスキー大統領、原子力安全と戦争終結に中国の協力を要請

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は6/2、同国での戦争により欧州最大の原子力発電所が引き続き危険にさらされる中、中国は原子力安全で役割を果たすことができると述べた。毎年シンガポールで開かれるIISS(英国国際戦略研究所)主催のIISSアジア安全保障会議(シャングリラ会合)の傍らで、ゼレンスキー大統領は、原子力安全性維持に対する中国の支援は「間違いなく大きな利益となる」と述べた。同大統領は、どのような役割を果たすべきかについては明言しなかったが、中国を含む核保有国が、全世界を脅かしている紛争であるこの戦争の出口を見つけるのに協力してほしいと述べた。ゼレンスキー氏は、ウクライナは中国によるロシアへの軍民両用兵器システムの輸出を警戒しているとも警告した。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は6/2、シンガポールで行われた第21回シャングリラ会合首脳会議後の記者会見で発言した。写真:AP

 

従来炉および先進炉設計におけるシビアアクシデント研究の進展をレビュー

経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)は、「事故の分析とマネジメントに係るワーキンググループ(WGAMA)」が主導する協力活動を通じて、加盟国の重大事故管理能力向上に向けた取り組みを支援している。この取り組みの一環として、NEAは5/13~16にかけてスウェーデンのストックホルムで第11回重大事故研究レビュー会議(ERMSAR 2024)を共催した。参加者は、炉内および炉外のコリウム挙動と冷却性、水素リスク管理、格納容器挙動、放射性物質放出など、重大事故研究の進歩について検討した。

(画像:OECD/NEA)

先進的核燃料サイクルに関する科学的問題について議論

燃料サイクルの物理と化学に関する専門知識は、先進的な原子炉システムの開発と導入に極めて重要であり、現在、原子力エネルギーをより広範なエネルギー転換に組み込む取り組みの一環として、大きな注目を集めている。経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)の「先進燃料サイクルの科学的問題に関するNEA作業部会(WPFC)」は、5/15~17、加盟国、国際機関(IAEA、第4世代国際フォーラム、欧州委員会)、および専門家グループの代表者を集め、先進燃料サイクル分野のトピックに関する最新情報を議論した。

(画像:OECD/NEA)

 

科学者らが原子力施設の有害廃棄物を清掃する人間型ロボットを開発

ロボットのメーカーは、このロボットが発電所にとどまらず、建設や医療分野などでも役立つ可能性があると考えている。米アルゴンヌ国立研究所(ANL)で設計されたロボットが、まもなく放射能汚染地域に向かうことになる。​​研究所の報告によると、ロボットは腕と指を使って、放射性廃棄物の容器を注意深く器用に扱うことができ、最近、オークリッジ国立研究所(ORNL)で、放射性物質を用いないコールド試験を実施した。

(写真:ORNL)

 

論説:ロシアの「放射性潜水艦」は北極圏にとって依然として脅威

ウクライナ侵攻の戦場から遠く離れたロシア北西部では放射能の脅威が迫っているが、その除去は半分しか行われておらず、ほとんど無視されている。ロシアの北極圏は、地球上で最も汚染された場所の1つであり続けるだろう。旧ソ連の原子力潜水艦基地や陸上の整備場から、廃棄された原子炉、放射性廃棄物、そして場合によっては意図的に海上で沈没した原子力潜水艦全体まで。ソ連崩壊後、西側諸国の政府連合が、かつて恐れられていたソ連の原子力潜水艦隊の残骸の除染に協力した。1990年代後半から2000年代初頭にかけて、使用済ウラン燃料を積んだまま錆びて放置された潜水艦計198隻が、二国間資金協定や欧州諸国との科学交流を通じて安全に解体された。しかし、2022年2月にロシアの戦車がウクライナに侵入して以来、その協力は停止している。当時、クレムリンは核の浄化は自力で続けられると主張していた。しかし、ベローナでのレポートで示されているように、モスクワの戦時指導部は任務を完遂することにほとんど関心がなく、資金もほとんどない。

退役した潜水艦の原子炉室がコラ半島のサイダ湾の桟橋に浮かんでいた。写真:トーマス・ニルセン