今日はロシア情報が非常に目立つ。

原子力史上最悪の原子炉自体の爆発事故を起こしたチョルノービリ4号(放出放射能量は福島第一よりはるかに大)と同じRBMK-1000型は、EUでは、全て廃炉とすることを加盟の条件としているが、ロシアでは生き残っているレニングラード4号機で医療用アイソトープ製造の照射試験に成功したという、ロシア以外では考えられないニュース。

ALPS処理水について、中国は相変わらず根拠なく怒って見せるだけ。ロシアはさらにたちが悪く、汚染水の浄化処理には触れず、デブリに触れた汚染水がそのまま放出されているかのような悪質な印象操作報道で、中国を「支援」している。さすがの連係プレーと言うところ。

一方、ロシアの120万kW級高速炉BN-1200建設が環境評価通過と言う西側の追随を許さない進展もあり。

  • 韓国中央日報:東京電力、福島第一原発の放射性物質処理水を放出
  • ロシア側続報:化学防衛部隊も参加してザポロジェ原発で緊急時対応演習実施
  • ユーロニュース解説:フランスとドイツの原子力発電に関する違い
  • ノルスク・シャーナクラフト、オフグリッドSMRプロジェクトに注力
  • SMR水素製造の高いコスト・パフォーマンスを示す研究
  • ロシアのBN-1200計画、環境のハードルをクリア
  • IAEA事務局長、原子力海運への「ロードマップ」を求める
  • 将来の事業拡張を支えるため運転期間延長は不可欠:コンステレーション
  • 米国、国産核燃料34億ドルの入札を開始
  • ロシア・レニングラード原発で医療用アイソトープ・サマリウム153の照射試験が成功
  • テネシー州の2大学が原子力プログラム資金獲得
     

韓国中央日報:東京電力、福島第一原発の放射性物質処理水を放出

東京電力は、福島第一原子力発電所から6回目となる放射能処理水の放出を金曜日に開始し、6/4までに7,800トンを放出する。これは、2023年8月以来、過去5回、合計39,000トンに続くものである。

防護服とマスクを着た作業員が福島第一原子力発電所J1エリアで建造中のタンクを見上げる資料写真(AFP/聯合ニュース)

中国メディア:

http://news.china.com.cn/txt/2024-05/17/content_117195343.shtml 相変わらず根拠なく怒って見せているだけで中身なし

ロシアメディア:

https://tass.ru/obschestvo/20825441 溶融炉心に触れた汚染水をALPS他で浄化処理していることに全く触れていない言語道断のつまみぐいミスリーディング報道。さすがロシアのお家芸

 

ロシア側続報:化学防衛部隊も参加してザポロジェ原発で緊急時対応演習実施

ザポロジェ原子力発電所(ZAES)の従業員と放射線、化学、生物防衛部隊の隊員が緊急時対応訓練に参加したと ZAESがテレグラムで報じた。「情報では、4ユニットのポンプからスプリンクラー・ポンドにプロセス水を供給する地下ドレン集水溝で水漏れが発生。シナリオによれば『事象』の結果、隣接エリアに水が広がった。模擬された『緊急事態』の影響は即座に解消された。この訓練には放射線、化学、生物防衛部隊も参加した」と言う。訓練はIAEA職員の監督のもとで行われた。「実践的な演習はロシアの原子力発電所の安全性にとって最も重要な要素だ。これは国内のすべての原子力発電所で実践されている文化の一部であり、たゆみない安全運転を保証するものだ」とザポロジェ原発所長のユーリー・チェルニチュク氏は語った。

2022年9月からIAEAスタッフがサイトに常駐している(画像:IAEA)

関連報道:

https://www.world-nuclear-news.org/Articles/IAEA-officials-observe-emergency-drill-at-Zaporizh

 

関連ロシア側プロパガンダ:RIAノーボスチによるIAEAグロッシ事務局長インタビュー

https://ria.ru/20240517/stantsiya-1946813423.html

https://ria.ru/20240517/sotrudnichestvo-1946814540.html

https://ria.ru/20240517/grossii-1946816335.html 

https://iz.ru/1698355/2024-05-18/grossi-zaiavil-o-neobkhodimosti-prodolzhat-dialog-s-rf-po-situatcii-na-zaes

 

ユーロニュース解説:フランスとドイツの原子力発電に関する違い

フランスとドイツの対照的な戦略は、原子力に対する政治的・国民的傾向の違いを浮き彫りにしている。フランスが安定した低炭素エネルギー供給のために原子力を活用する一方、ドイツは再生可能エネルギー中心のアプローチで、エネルギーの信頼性とカーボンニュートラルという課題に直面している。EUのREPowerEU計画は、バランスの取れたエネルギーミックスの重要性を強調しており、原子力は欧州の二酸化炭素排出量を削減する上で重要な役割を果たしている。

写真:Martin Meissner/AP

 

ノルスク・シャーナクラフト、オフグリッドSMRプロジェクトに注力

ノルウェーの原子力プロジェクト開発企業ノルスク・シャーナクラフト社は、新たな事業計画の下で、信頼性の高い電力と熱へのアクセスの両方が必要な工業地域にオフグリッドの小型モジュール型原子炉(SMR)を建設する計画であると述べた。同社は、ノルウェーの将来のエネルギー需要の推定値は、500~2,330億キロワット時の範囲でとなるだろうと指摘。しかし、人工知能(AI)の導入により、電力需要に関するこれまでの予測は役に立たないとも述べている。同社は、ノルウェーで水力発電が開発されたとき、水力発電所がある場所に産業が興ったが、SMR を使用すると、産業が存在する場所で発電を行うことができるようになるという。

SMR 発電所とグリーン電解工場を備えたデータセンターのレンダリング (画像: ノルスク・シャーナクラフト)

 

SMR水素製造の高いコスト・パフォーマンスを示す研究

固体酸化物電解セル(SOEC)と小型モジュラー式原子炉(SMR)の組み合わせを使用すると、1キログラムあたり3.50ユーロ(590円)未満で水素を製造でき、代替方法よりも大幅に安価であるとオランダの原子力開発会社ULC-エナジーBVが主導した新たな研究が結論付けた。2023年11月、ULC-エナジーは、デンマークのトプソー社、英国のロールス・ロイスSMR社、オランダのエネルギー市場コンサルタント会社KYOSと共に、ロールス・ロイス SMR 原子力プラントによって生成される電力と熱とトプソーのSOEC技術を利用した水素製造を共同で調査する契約を締結したと発表していた。

トプソーのSOEC電解槽と2基のロールス・ロイスSMR の外観 (画像: ULCエナジー)

 

ロシアのBN-1200計画、環境のハードルをクリア

ロシア連邦・天然資源監督庁(Rosprirodnadzor)は、ベロヤルスク原子力発電所のナトリウム冷却高速炉BN-1200Mの計画を承認した。ロスアトムによると、同庁は調査の結果、「環境に重大な影響はない」ことが明らかとなり、プロジェクトは環境法の要件を満たしていると述べた。この回答は、ロシア連邦環境・技術・原子力監督庁(Rostechnadzor)に提出される文書に含まれる予定で、Rostechnadzorは提案されている新設原子力発電所の認可発行を決定することになる。

(画像:ベロヤルスク原発)

関連報道:

https://tass.ru/obschestvo/20827599

https://ria.ru/20240517/ural-1946616811.html

 

IAEA事務局長、原子力海運への「ロードマップ」を求める

IAEA(国際原子力機関)のラファエル・グロッシ事務局長は、商業船舶の動力源としての原子力ソリューションへの「明確なロードマップ」を求めている。グロッシ事務局長は5/16、原子力海事機構(NEMO)の創設メンバーであるロイド・レジスターのニック・ブラウンCEOと会談した。NEMOは、原子力規制当局と海事規制当局を支援し、原子力海運のための適切なガイドラインを作成することを目的としている。

江南造船所の原子力コンテナ船

 

 

将来の事業拡張を支えるため運転期間延長は不可欠::コンステレーション

米国におけるクリーンエネルギー需要の増大に応えるため、コンステレーション・エナジー社は、既設原子力発電所サイトにおける出力増強と増設による発電容量の拡大を計画しており、スリーマイル・アイランドの運転再開も排除していないが、既設原子力発電プラントの運転期間を延長することも含まれている。ジョー・ドミンゲスCEOは投資家にこう語った。データエコノミーとコンステレーションの原子力発電容量は「ピーナッツバターとゼリーのように結びついている」と同CEOは5/9の同社第1四半期決算会見で述べた。 同社は複数の「大手有名企業」と将来のエネルギー需要への対応について「協議」を行っているが、こうした「大規模で複雑な取引」が完了するには時間がかかるという。

スリーマイル・アイランド1号機は2019年に閉鎖(画像:NRC/エクセロン)

関連報道:

https://www.local21news.com/news/local/three-mile-island-unit-1-restart-pennsylvania-michigan-palisades-nuclear-power-plant-constellation-energy-earnings-call-may-2024

 

米国、国産核燃料34億ドルの入札を開始

米国政府は近く、国産の原子炉燃料について最大34億ドル相当の契約の入札を要求する。この動きは、現在米国で使用されている原子炉燃料の約4分の1を供給しているロシアの核燃料輸入への依存を減らすための広範な戦略の一環である。この構想には、ジョー・バイデン大統領がロシアからの濃縮ウランの輸入を禁止したことを受け、国内の核燃料生産を再開するための27億ドルも含まれている。

ニューメキシコ州ユーニス近郊で、濃縮ウランを充填し出荷を待つキャニスター(写真:ブルームバーグ)

 

ロシア・レニングラード原発で医療用アイソトープ・サマリウム153の照射試験が成功

痛みの軽減に使用される医療用アイソトープ、サマリウム153(Sm-153)の試験照射がレニングラード原子力発電所(訳注:関連過去報道情報によると4号機。チョルノービリと同じRBMK-1000型の数少ない生き残り)で実施され、成功した。ロスエネルゴアトム社は、 「5月、レニングラード原子力発電所の医療用アイソトープ製造ラインにSm-153が加わった。当社は、原料を取得する照射試験に成功した。 製造の許認可は事前に取得済み。医薬品製造開始前にはパイロットバッチの製造が求められる」とのメッセージを発表。Sm-153放射性医薬品は、筋骨格系の慢性疾患の外科治療だけでなく、がん患者に緩和ケアを提供するために骨転移の痛みを軽減するために広く使用され、麻薬性鎮痛薬を使い続けることなく骨転移の進行を抑制し、持続的な痛みの軽減を達成する特性も持つという。ロスエネルゴアトムは、レニングラード原子力発電所の発電炉でモリブデン99、ヨウ素131、ルテチウム177、サマリウム153をリズミカルに生成する能力を持っており、これらは診断と治療に使用されている。

(画像:ロスアトム提供、Nuclear Engineering International経由)

関連過去報道(西側):

https://www.neimagazine.com/news/newsleningrad-npp-to-expand-medical-radioisotope-production-10952159

 

テネシー州の2大学が原子力プログラム資金獲得

テネシー州の原子力エネルギー基金は、ビル・リー州知事の2023-2024年度予算の一部であり、テネシー大学ノックスビル校(UTK)とローン・ステイト・コミュニティ・カレッジに原子力教育プログラム強化のための資金を提供する。UTKは、原子力技術者でなくても原子力工学の副専攻を取得できるプログラムを新設するために資金を使用する。ローン・ステイト・コミュニティ・カレッジは、2024年秋に開講する原子力技術プログラム用に実験装置を購入し、実践的な学習体験を提供する。

クレジット: テネシー州経済コミュニティ開発局