国連安全保障理事会でのIAEAグロッシ事務局長の報告の全文。
西側も一斉に報道しているが、ロシアメディアの報道よりいつも1日遅れているのが気になるところ。
(演説準備原稿)
ウクライナにおける原子力安全、核セキュリティ、保障措置に関するIAEAの活動について最新情報をお伝えする機会を与えてくださった安全保障理事会議長に感謝します。また、IAEAの取り組みを継続的に支援してくださっている理事会にも感謝します。
大規模な原子力発電プログラム施設の中で行われた史上初の戦争が始まってから2年以上が経過しました。
IAEAは開戦以来、状況を注意深く監視し、ウクライナを日々支援しています。 IAEAスタッフは継続的に駐在し、ロシアの運転管理下にあるザポリージャ原子力発電所を含むウクライナの5つの原子力発電所すべての状況を監視しています。
本日の私の声明は、5月30日にまさにこの議場で初めて確立した5つの具体的な原則に対する最近の重大な違反に焦点を当てます。これら 5つの具体的な原則は、原子力事故を防止し、ザポリージャ原子力発電所の健全性を維持するためのものです。それらがどのようなものか、改めて思い起こしてください。
1. プラントから、またはプラントに対するいかなる種類の攻撃も、特に原子炉、使用済燃料貯蔵施設、その他の重要なインフラ、または人員を標的としてはあるべきではない。
2. ZNPPは、プラントからの攻撃に使用される可能性のある重火器(多連装ロケットランチャー、砲兵システムと弾薬、戦車)の保管場所やや軍関係者の基地として使用されるべきではない。
3. プラントへの外部電源を危険にさらすべきではない。そのため、所外電力が常に利用可能かつ安全であることを保証するためにあらゆる努力を払う必要がある。
4. ZNPP の運転の安全・セキュリティ確保に不可欠なすべての構築物。系統及び機器は、攻撃や破壊行為から保護されるべきである。
5. これらの原則を損なうような行動はとるべきではない。
昨年5月30日、私はここで、破滅的な原子力事故の危険を回避するにはこれらの原則を遵守することが不可欠であり、敬意を表して厳粛に双方にこれらの原則を遵守するよう要請すると述べました。
昨年5月の我々の会合では、高名なる安全保障理事会メンバー各位とウクライナは、これらの原則を明確に支持しました。
それにもかかわらず、議長閣下、過去 10 日間にわたり、これらの原則の第1番目が繰り返し違反され、ザポリージャ原子力発電所における原子力安全・核セキュリティに対するリスクがステップ状に増加しました。
4月7日日曜日、ZNPP国際支援・援助ミッション(ISAMZ)は、ZNPPを直接標的とした2022年11月以来初の攻撃を確認しました。
ISAMZ チームは、6 号機原子炉建屋の格納容器ドームの頂点で、 1 回の直撃を受けた場所を検分することができました。構造物への損傷は表面的ですが、この攻撃は原子炉格納容器の標的化に成功した非常に危険な前例を作りました。
他の2件の攻撃は原子炉主要建屋のすぐ近くで行われ、少なくとも1人の死傷者がありました。
サイト駐在のIAEA専門家は、ZNPP側から、サイト内の酸素と窒素の生産施設に対するドローン攻撃、サイト外周壁のすぐ外にある訓練センターに対する2件の攻撃、6号機タービン建屋上空でのドローンの撃墜について報告を受けました。
こうした無謀な攻撃は直ちにやめなければなりません。幸いなことに、今回は放射性物質による事故には至りませんでしたが、原子力安全がすでに損なわれているザポリージャ原子力発電所のリスクは大幅に増大しています。
私は攻撃そのものだけでなく、攻撃が発生したコンテキストも懸念しています。これらの直接攻撃のすでに数か月前から、施設近傍や近隣のエネルゴダル市で、単独のドローンによる侵入が増加していました。
原子力の安全性が低下している他の分野では、プラントは現在、わずか 2 系統の外部電源に依存しています。 過去1年間に、プラントに外部電源が1系統しかない状態が少なくとも4 回あり、その不安定状態は最大4か月続きました。
率直に言わせていただきます。2年に及ぶ戦争がザポリージャ原子力発電所の原子力安全に重くのしかかっています。IAEA の原子力安全・核セキュリティに関する 7 つの柱はすべて侵害されています。最後の重量チップが精密にバランスのとれた天秤を傾けるのを座して見ている訳には行きません。
プラントの6基の原子炉は現在低温停止状態にあり、IAEAの勧告を受けて2日前に最後の原子炉が低温停止状態に移行しているものの、大規模な原子力事故の潜在的な危険は依然として非常に現実的なものです。
IAEAは今後もザポリージャ原子力発電所の運転状況を注意深く監視し、急速な変化や課題のコンテキストの中で技術的に実行可能な代替案を提供していきます。
この施設での我々の働きは今後も不可欠です。このことは、この紛争のどちらの側からも、すべての人によって認知を受けています。 しかし、効果を発揮するには、IAEAチームがタイムリーにアクセスしてプラントの状態を評価し、26か月以上も戦闘地域にあることが原子力安全に与えた累積的な影響を評価する必要があります。
議長閣下、
我々は原子力事故に危険なほど近づいています。明日何が起こるかをサイコロの目で決めるというような慢心を許してはなりません。我々は、今日、事故のリスクを最小限に抑えるために全力を尽くしなければなりません。
まさに1年前にこの議場で確立された5つの原則は遵守されなければなりません。この原則は、重大な放射線影響をもたらす可能性のある大規模な原子力事故を防ぐためにあります。
最近の攻撃はこれらの重要な原則に対する明らかな違反であり、止めなければなりません。
私は本理事会に対し、5原則と、それらを支えるIAEAの原子力安全・核セキュリティに関する7つの柱に対する断固とした支持を求めます。そして、国際社会への奉仕として、状況を監視するIAEAの役割への継続的な支援をお願いします。
非常に困難な課題ではありますが、IAEAは不可欠なコミュニケーションのラインを開き続けていますし、今後もそうし続けます。貴各国と理事会全体の支援が必要です。
本日私をお招きくださり、この重要な問題に対する各位の継続的なコミットメントを示していただいた理事会に感謝いたします。
IAEA と私自身は、国際平和と安全を維持するというこの機関の使命を支援するために、今後も皆様のご要望に応じてまいります。
議長閣下、ありがとうございました。
IAEAラファエル・マリアノ・グロッシ事務局長(画像:IAEA)
グロッシ事務局長 Xポスト:
Briefed the @UN Security Council #UNSC on the situation at #ZNPP following recent grave violations of the five concrete principles for protecting the plant.
— Rafael MarianoGrossi (@rafaelmgrossi) April 15, 2024
My full statement: https://t.co/aF8SJgj72g pic.twitter.com/LGqkAXuLq8
IAEA Xポスト:(演説動画あり)
Happening now: join us at @UN Security Council #UNSC where Director General @rafaelmgrossi briefs on the situation at #ZNPP. https://t.co/3m28js5CzI
— IAEA - International Atomic Energy Agency ⚛️ (@iaeaorg) April 15, 2024
関連報道:
https://www.rferl.org/a/nuclear-plant-zaporizhzhya-ukraine-grossi-accident/32906550.html
https://www.kyivpost.com/post/31165