• 米国原子力学会特集:日本はどのようにGXに原子力を利用する計画か
  • 英国の原子力人材を増強するための投資を発表
  • イタリア、EUの気候変動目標達成のために原子力再導入を検討
  • 南アフリカ、HTR燃料の世界的な供給者になることを目指す
  • 米国プライス・アンダーソン法を2065年まで延長
  • 米ケンタッキー州議員、原子力を支持するも石炭が最優先と発言
  • 米LANL、アルファ線放出放射性核種用のフィールドゲージを開発
  • 韓国原研、高密度研究炉燃料の照射試験を完了
  • ドイツ・イザール2号に解体許可が発給
  • ホルテック、ピルグリム原発の汚染水をマサチューセッツ州外に搬出する可能性
     

米国原子力学会特集:日本はどのようにGXに原子力を利用する計画か

原子力安全研究協会(NSRA)の山口彰理事による寄稿-日本政府は2022年、電力需給の危機を克服するため、原子力政策の再活性化を発表した。2023年に承認された「グリーントランスフォーメーション(GX)実現のための基本方針」は、経済・社会・産業構造を調整することにより、原子力を最大限に活用し、クリーンで安定したエネルギーに集中することでシステムを変革することを目指している。

GXの構造と日本の新しい原子力政策(画像:山口彰氏)

 

英国の原子力人材を増強するための投資を発表

英国のリシ・スナク首相は、同国の原子力労働力を強化し、防衛および民生用原子力産業で予想される4万人の新規雇用を支援するための官民投資パッケージを発表した。英国政府は、BAEシステムズ、ロールスロイス、EDF、バブコックなど産業界と提携し、2030年までに少なくとも7億6,300万ポンド(1,460億円)をスキル、雇用、教育に投資すると発表した。 この投資により、8,000以上のキャリア機会が創出され、20年末までにこのセクターの40,000人の新規雇用が確保されることになる。また、原子力実習生と卒業生の数を2倍にし、専門科学と核分裂のPhDを4倍増とする計画を支援することになる。

リシ・スナク首相(左)とジェレミー・ハント財務大臣(右)は、英国の潜水艦が製造されているバロー・イン・ファーネスのBAEシステムズを訪問(画像:Simon Dawson / No.10 Downing Street)

関連報道:

https://www.edp24.co.uk/news/national/24208703.pm-hails-nuclear-renaissance-minister-says-we-running-catch-up/ 

 

イタリア、EUの気候変動目標達成のために原子力再導入を検討

イタリアは、今世紀半ばまでに初の気候ニュートラル大陸を目指すというEUの目標を達成し、エネルギー安全保障と持続可能性を高めるため、原子力の再導入を検討している。「特に持続可能な新しい原子力技術に注目している」とアントニオ・タヤーニ外相は語る。

(画像:Adnkronos International)

 

南アフリカ、HTR燃料の世界的な供給者になることを目指す

3/21にベルギーで開催された原子力エネルギーサミットで、南アフリカは「この暦年中に」250万kWの新しい原子力に関する提案依頼書(RFP)の発行を準備しているだけでなく、ペブルベッドモジュール型原子炉(PBMR)技術を開発中であり、「平和利用のための完全な核燃料サイクルを実施する機会に値する」と述べた。

ウランを含むアフリカ大陸の豊富な資源を考慮して、「南アフリカは、これらの資源の受益を利用してアフリカの原子力発電所の原料を生産しつつ、必要なすべての承認を考慮した戦略的プロジェクトとして独自のPBMR技術を開発するつもりである。南アフリカはさらに天然資源を活用して高温炉(HTR)燃料の世界的な供給者となり、その後2030年以降の商業展開を想定した多目的炉技術の供給者となるつもりである。」という。

ブリュッセルで開催された原子力エネルギーサミット(画像:IAEAフィードからのスクリーンショット)

 

米国プライス・アンダーソン法を2065年まで延長

米国ジョー・バイデン大統領は、原子力損害賠償制度を支えるプライス・アンダーソン法の2065年までの40年間延長を含む、1.2兆ドルの歳出パッケージ(ミニバス予算法案)に署名した。同法はまた、各原発が加入しなければならない一次保険金を5億ドルから20億ドルに引き上げる。プライス・アンダーソン法の延長は、3月初旬に出された最初のミニバス予算案には含まれていなかった。上院環境・公共事業委員会(EPW)のトム・カーパー(デラウェア州選出、民主党)委員長と有力議員であるシェリー・ムーア・カピート(ウェスト・ヴァージニア州選出、共和党)上院議員は、3/21のプレスリリースで、上院と下院の歳入委員会による第2次ミニバスにプライス・アンダーソン法が含まれたことを祝った。

カーパー委員長とカピート議員(画像:米国原子力学会)

 

米ケンタッキー州議員、原子力を支持するも石炭が最優先と発言

米国ケンタッキー州議会は、同州に原子力を導入する土台となる法案を全会一致で可決したが、法案の支持者でさえ、石炭が最優先であることを強調している。「これは決して石炭と競合するものではない。石炭を補完するものだ。ケンタッキーは石炭の州だ。」とランディ・ブリッジス州議会議員は言う。。

議場のギャラリーを埋め尽くす訪問者(2018/4/13日、AP Photo/Bryan Woolston, File)

 

米LANL、アルファ線放出放射性核種用のフィールドゲージを開発

米国ロスアラモス国立研究所(LANL)では、プルトニウムなどのアルファ線を放出する放射性核種を検出するための非破壊アルファ分光計の開発が進められている。この分光計を現場で使用すると、核燃料デブリを直接測定し、同位体に関するリアルタイムの情報を提供できるため、原子力事故における放射線管理が改善される。

現場用アルファ分光法は、原子力緊急事態への対応に大きな可能性を秘めている。 提供/LANL

 

韓国原研、高密度研究炉燃料の照射試験を完了

韓国原子力研究院(KAERI)は高密度ウラン・シリサイド燃料の照射試験に成功し、良好な検査結果を得たことで、高性能研究炉の燃料を高濃縮ウランから低濃縮ウランへ転換することが可能との見通しが得られ、商業化に際して国際的な核不拡散への取組の強化に資する道が開けた。KAERIは、研究炉用に設計された高ウラン密度の板状ウラン・シリサイド燃料の照射試験と目視検査が首尾よく完了したと発表した。材料試験炉(MTR)向け 試験燃料のウラン密度は5.3g/㎤で、現在使用されている燃料よりも約10%高い。 目視検査でも良好な観察結果が得られた。高性能研究炉用燃料として、KAERIでは微粒化法を用いたウラン・シリサイド(U3Si2)球状粒子粉末を開発し、各種研究炉燃料の開発に活用してきた。 KAERIは、ベルギー原子力研究センター(SCK・CEN)と協力して、「KAERI高密度微粒化シリサイド燃料認定照射プロジェクト(KIMQI)燃料認定プロジェクト」として知られる高密度微粒化低濃縮 U3Si2 MTR燃料認定キャンペーンに参加している。

ベルギーのBR2試験炉における試験燃料の照射(画像:KAERI)

 

ドイツ・イザール2号に解体許可が発給

ドイツのプロイセン電力は、バイエルン州環境・消費者保護省からイザール2号原子力発電所の解体の承認を得た。イザール2号原発は電気出力140万kWのKonvoi型加圧水型原子炉単基プラントであり、2023/4/15に停止されたドイツの最後の原子力発電所3基のうちの1基だった。 ドイツの8つの原子力発電所の廃炉を担当するプロイセン電力は、すでに2019年7月に廃炉と解体の申請を提出していた。

イザール1号と2号(画像:Regine Robbanks / Preussenelectra)

 

ホルテック、ピルグリム原発の汚染水をマサチューセッツ州外に搬出する可能性

マサチューセッツ州は、ホルテック・インターナショナル社がピルグリム原子力発電所からケープコッド湾に放射性汚染水を排出する計画を拒否する草案を、まだ、確定していない。そのため、ホルテック社は水を州外に搬出することを検討することになったが、同社は、トラック事故による流出リスクと高コストのため、主な処分方法としては輸送を使いたくないとしている。

2023/4/4、ピルグリム原子力発電所(Raquel C. Zaldívar/New England News Collaborative)。