• ウクライナ国境近くのロシア原発にドローン攻撃
  • 海陽3号の格納容器の建設が進む
  • マイクロ原子炉導入に向けたカナダのパートナーシップ
  • グーグル、マイクロソフト、ニューコアがクリーン エネルギー開発で提携
  • NuScaleとヘリオンの提携がニューコアのネット・ゼロに貢献する
  • ロシア・カリーニン1号アップグレードで、新制御室シミュレータ建屋建設へ
  • 中国、宇宙船に動力を供給する「収縮可能な」原子炉を建設
  • テラパワー社のNatrium実証プラント、6月に着工へ
  • インディアン・ポイント閉鎖後3年間でニューヨーク州の排出量が増加
  • 欧米の核融合技術リーダーたちが中国に追いつく先行策を議論
  • 小角中性子散乱装置がペンシルバニア州に到着
  • ロシア科学者との協力を打ち切るというCERNの決定をロシア政府が批判
  • 欧州原子核研究機構(CERN)は2024年後半にロシア科学者との協力を打ち切る予定だが、ロシア外務省マ
  • ロスアラモスの寵児は高速中性子炉だった
     

ウクライナ国境近くのロシア原発にドローン攻撃

地元メディアの報道によると、ウクライナ軍は国境地帯クルスクのロシア原子力発電所を、少なくとも5機の自爆ドローンと1発のS-200ミサイルで攻撃しようとした。クルチャトフ原子力発電所(訳注:正確にはクルスク原発(チョルノービリと同型のRBMK-1000型炉3基が運転中)である模様)を狙ったドローンとミサイルはロシアの防空システムによって撃墜されたが、落下した破片はクルスク地方の少なくとも7つの通りに電力を供給する変電所を損傷させたと、ロシアのテレグラム・チャンネル「マッシュ」が3/20に報じた。原子力発電所はクルスク市の西約40kmに位置し、ウクライナとの国境からは約110km離れている。

クルスク原発サイトでの従業員(画像:RIAノーボスチ)

関連報道:クルスク原発は正常に運転中

https://tass.ru/obschestvo/20291285 

https://ria.ru/20240320/aes-1934384323.html 

 

海陽3号の格納容器の建設が進む

中国の上海核工程研究設計院(SNERDI)は、中国山東省の海陽原子力発電所3号機の格納容器の壁が、第3円筒リングの据付に伴い所定の位置に設置されたと発表した。ウェスティングハウス AP1000 の中国版である CAP1000 の鋼製格納容器は、下部鏡、第1~ 3円筒リング、上部シールの 5 つのモジュールで構成される。内径約40m、高さ 11.6m、総重量約 660tの第 3円筒リングは、3/16に2時間弱続く作業で所定の位置に吊り込まれた。

海陽3号機に据え付けられた第3円筒リング(画像:SNERDI)

所定の位置に吊り上げられたコンポーネントが (画像: SNERDI)

 

マイクロ原子炉導入に向けたカナダのパートナーシップ

プロディジー・クリーン・エナジー社と先住民経済開発協会デ・ネデ(Des Nëdhé)グループは、プロディジーのマイクロ原子炉可搬型原子力発電プラント所を使用して、カナダの遠隔地の鉱山やコミュニティに電力を供給する機会を開発する覚書に署名した。覚書に基づき、プロディジーとデ・ネデは、可搬型原子力発電所(TNPP)プロジェクトの可能性を探り、カナダ全土の先住民族、イヌイット、メティと協力し、先住民族がTNPPの新規建設にオーナーシップを持つ方法や、先住民族の労働力がTNPPの商業化と戦略的インフラ開発で主導的役割を果たす方法を特定する。

プロディジー社のマイクロリアクター発電所TNPPの概念図。海上輸送され、陸上に設置される(画像: プロディジー)

 

グーグル、マイクロソフト、ニューコアがクリーン エネルギー開発で提携

北米の鉄鋼メーカー、ニューコア社と米国のハイテク大手グーグルおよびマイクロソフト社は、電力エコシステム全体で協力して新しいビジネスモデルを開発し、先進的な原子力を含む高度なクリーン電力技術に対する需要を集約する。これらのモデルでは、先進原子力、次世代地熱、クリーン水素、長期エネルギー貯蔵などを含む、初の初期商業プロジェクトの開発を加速するように設計されると言う。最初のステップとして、各社は米国の複数地域で、一定期間の取引を求めている潜在的なプロジェクトについて情報依頼書(RFI)を発行し、技術供給元、デベロッパー、投資家、電力会社などに参加を奨励する予定だ。

NuScaleとヘリオンの提携がニューコアのネット・ゼロに貢献する

ニューコア社は、2050年までにネット・ゼロを達成し、グリーン・スチールの需要に応えることを目標としているため、NuScaleパワー社およびヘリオン・エナジー社との提携を含め、原子力の選択肢を模索している。ニューコアは、小型モジュール炉(SMR)と核融合炉のどちらを使用するかについては「技術的にさっぱりわからない」が、「結局のところ、技術的に実行可能で大規模に使用できるどちらか一方を、今後の製鉄所の電力供給に使用するつもりだ」と、エネルギー・ソリューション・サービス担当ゼネラル・マネージャーのタビサ・スタイン氏は言う。

タビサ・スタイン氏 (画像:SMU)

 

ロシア・カリーニン1号アップグレードで、新制御室シミュレータ建屋建設へ

カリーニン原子力発電所1号機用の新しい本格的な制御室シミュレータ建屋に初のコンクリートが打設された。以前はシミュレータを2号機と共有していたが、近代化プログラムにより、現在は専用訓練施設が必要になっている。アップグレード工事は2025年末までに完工する予定で、4基のVVER-1000原子炉にそれぞれ1基ずつ、合計4基個別のフルスケール・シミュレータを設置することになる。  カリーニン原子力発電所の人材訓練担当副チーフエンジニア、エフゲニー・コレスニチェンコ氏は、これは他に類を見ないものであるという。

建屋完成予想図(画像:カリーニン原発)

 

中国、宇宙船に動力を供給する「収縮可能な」原子炉を建設

『Scientia Sinica Technologica』の論文によると、中国の科学者らは「収縮可能」で、火星へ往復する宇宙船に電力を供給するために使用できるリチウム冷却原子炉を開発したという。 1500キロワットの原子炉は、地上ではコンテナサイズに圧縮でき、重さは8トン未満だが、宇宙に打ち上げると20階建てのビルほどの大きさの構造物に拡張できる。

中国の実験用リチウム冷却宇宙原子炉。中国科学院/SCMP

 

テラパワー社のNatrium実証プラント、6月に着工へ

テラパワー社は、ワイオミング州に34万5,000キロワットのナトリウム冷却高速炉Natriumを導入した実証炉原子力発電所を6月に着工する予定だ。連邦政府はこの発電所建設に20億ドル拠出することをコミットしており、10億ドル近い民間資金も確保している。

ゲイツ氏は 2008 年に TerraPower を設立した。 (写真 Justin Tallis - WPA Pool/Getty Images)

 

インディアン・ポイント閉鎖後3年間でニューヨーク州の排出量が増加

ニューヨーク州のインディアン・ポイント原子力発電所が2021年に閉鎖されて以来、クリーンエネルギーでなく、天然ガスが電力需要ギャップを埋めているため。温室効果ガスの排出量が増加している。コーネル大学の気候・エネルギー政策の専門家ベン・ファーナス氏は、「気候変動の観点から見ると、これはまさに後退であり、ニューヨーク市の電力供給の脱炭素化がこれまで以上に困難になった」と語る。 「これはニューヨークを本当に困難な状況に置く警告の物語だ。」

2021/4/26、インディアン・ポイント原子力発電所 写真: Seth Wenig/AP

 

欧米の核融合技術リーダーたちが中国に追いつく先行策を議論

欧米の核融合リーダーたちがこの週ワシントンD.C.に集まり、中国に追いつき、商業的に成立する核融合炉を開発するために研究資金を増やす方法を模索している。産業界は核融合をラボから営業運転に育成するための民間資金を求めており、核融合産業協会(FIA)は10年以内に送電網に接続することを期待している。

米国ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)、国立点火施設(NIF)の前置増幅器モジュール Damien Jemison/LLNL/Handout via REUTERS

 

小角中性子散乱装置がペンシルバニア州に到着

ペンシルバニア州立大学の放射線科学工学センター(RSEC)は、ベルリン・ヘルムホルツ・センター(HZB)から小角中性子散乱(SANS)装置を寄贈された米国初の大学研究炉となった。この980万ドルの装置は、科学者が有機物質の構造を決定することを可能にし、設置が完了すれば産業界、国立研究所、他大学の研究者に開放される。

ペンシルベニア州立大学RSECが受領したSANS装置。(写真:Poornima Tomy/ペンシルバニア州立大学)

 

ロシア科学者との協力を打ち切るというCERNの決定をロシア政府が批判

欧州原子核研究機構(CERN)は2024年後半にロシア科学者との協力を打ち切る予定だが、ロシア外務省マリア・ザハロワ報道官はこの決定について「政治的動機があり、絶対に受け入れられない」と述べた。CERNは1953年に設立され、ソビエト連邦との協力は 1967 年に初めて正式に締結された。1993 年にロシア連邦との協力協定が署名され、これが 2019 年の国際協力協定につながった。同協定は2024/11/30まで有効であり、 当事者間の協力の枠組となっている。「ウクライナに対する侵略」と題された2022年3月の国連総会決議を受けて、CERNは、追って通知するまでロシア連邦のオブザーバー資格を停止し、「ロシア連邦との双方向の資金、物資、人員のあらゆる交流を事実上停止する。ロシア連邦とベラルーシ共和国にある機関のすべての科学委員会へのCERN科学者の参加を停止し、またその逆も同様である。」としている。

CERNの大型ハドロン衝突型加速器(画像:CERN)

 

ロスアラモスの寵児は高速中性子炉だった

世界初の高速中性子炉であるクレメンタインは、75年前に当時のロスアラモス科学研究所(LASL)の実験炉として定格出力に達した。この25キロワットの原子炉はデルタ相のプルトニウムを燃料とし、冷却材として水銀を循環させており、中性子減速材も不要のため。小型化できた。

ロスアラモス科学研究所のクレメンタイン原子炉の外観。 (写真:LANL)