IAEAラファエル・マリアノ・グロッシ事務局長が来日し、一連の日程を終えた。

3/6にはロシアでプーチン大統領と会談し、3/7,8はウィーンで国際女性デー記念イベントに出席。間髪を入れずに地球を半周して日本へ。福島でALPS処理水放出を実地検分し、地元病院、地元自治体とも交流。その足で、東京で政府要人と会談し、東大で講義、シンポジウムでも講演。

この激務はよほどの体力と胆力がなければ務まらないと、同年代の筆者はつくづく感服する。

 

 

IAEAのラファエル・マリアノ・グロッシ事務局長は、福島第一原子力発電所からの処理水の排出を監視するための継続的なコミットメントの一環として、2024/3/11の週、日本を訪れた。

 

グロッシ事務局長はまた、東京で政府首脳、福島で地元関係者や若者グループとも会談した。

 

これは、処理水放出が始まって以来、事務局長にとって初めての日本訪問となる。2023年7月には東京で首相と会談し、日本の処理水放出計画に関するIAEAの包括的レビューを手渡し、放水予定地も視察した。

 

グロッシ氏の説明: 「IAEAも私自身も、福島第一原子力発電所からの処理水の管理放出が行われる前、実施中、そして完了後も監視すると言った。IAEAはここにいるし、最後の一滴までここに留まるつもりだ」。

 

8月、日本は処理水の排出を開始した。その後、IAEAの専門家による4回分の分析で、トリチウム濃度が日本の運用の上限値(訳注:1,500Bq/L)をはるかに下回っていることが確認された。

 

グロッシ氏は発電所で、すでに海水で希釈された処理水が制御された放流のために海へと移動する放流システムの垂直シャフトを視察した。

 

 

福島県を訪問中、グロッシ事務局長は、地元の主要なステークホルダー・グループと再び面会し、事故処理に関する意見を聴取するとともに、これまでの進捗状況についての見解を共有した。グロッシ事務局長は、地元の市長や漁業組合、農業組合の組合長らと建設的な意見交換を行い、IAEAが「完全な透明性、技術的正確性、広く開かれた誠実な協議」をもって「独立した公平な評価」を提供していることを説明した。

 

東京滞在中、事務局長は岸田文雄首相、上川陽子外相、伊藤信太郎環境相、齋藤健経済産業相、林芳正官房長官と会談した。会談では、現在進行中の処理水の排出や、プラント周辺の汚染土壌の浄化対策などについて話し合われた。

 

 

グロッシ事務局長はまた、データセンターの脱炭素化に向けた小型モジュール炉の活用など、原子力分野をめぐる課題や機会について検討するため、業界のリーダーたちとも会談した。通信大手NTTの川添雄彦氏と会談した際、事務局長は核融合エネルギーの最近の開発状況について話し、原子力科学を利用して健康状態を改善し、プラスチック汚染に対処し、食料安全保障を向上させるなどの主要な取り組みについて説明した。

 

グロッシ事務局長は福島で、放射線治療と核医学の能力を向上させることにより、発展途上国におけるがん治療へのアクセスを向上させる「希望の光(Rays of Hope)」イニシアティブの新たなアンカーセンターを発足させ、この開発アジェンダをさらに推進した。日本のネットワークとの協力は、16の医療大学と病院を結びつけるものである。

 

「多くの被害を被った福島から、我々は、より持たざる人々がより苦労をしないですむようにしようとしているのです」と、調印式でグロッシ氏は語った。

 

事務局長はまた、福島の一般財団法人温知会と寄付協定を締結した。「この寛大な寄付は、先進的ながん治療の提供における我々の共同努力を強化するものであり、がん医療の格差をなくすという我々の使命の一歩を示すものだ。」と述べた。

 

今回の出張中、事務局長は東京大学の学生を前に、IAEAの活動について講演した。福島県の学生との会合では、福島第一原子力発電所におけるIAEAの活動が将来の世代にとって重要であることが強調された。

 

 

グロッシ氏は東京で、原子力サプライチェーンに関するシンポジウムで講演し、日本の産業力とさらなる原子力計画により、この分野で日本がリーダーシップを発揮していることについての見解を述べた。「IAEAは、日本の原子力の安全かつ確実な利用を促進するために、その道筋に立ち会います」と付け加えた。