• 欧州最大のエネルギー輸出国フランスを担う鍵は原子力
  • ホルテック、競争を活用して英国の SMR製造工場用地を探索
  • アルゼンチンの研究用原子炉RA-10への据付に向け、反射体タンクを吊り上げ
  • 原子力若手グループがスペインの脱原子力に再考を求める
  • コネチカット州法案、ミルストンでの先進炉の研究を目指す
  • フランス、長期核燃料リサイクル計画を策定
  • オーストラリアのシンクロトロンが太陽光発電へ
  • オンタリオ州、ダーリントン・プラントでイットリウム90を生産へ
  • IAEA、原子力分野におけるジェンダー・バランスへの取り組みを強化
  • 米国上院、放射線被ばくに対する追加補償法案を承認
     

欧州最大のエネルギー輸出国フランスを担う鍵は原子力

調査会社モンテルEnAppSysの報告書によると、フランスは2023年に欧州最大のエネルギー純輸出国となり、原子炉の運転再開に伴い原子力が大きな役割を果たした。 フランスの原子力利用可能容量は2023年2月の4,600万キロワットと比較して、12月には5,000万キロワットを超えていたが、2023年下半期のエネルギー消費量は減少した。

(画像:モンテルEnAppSys)

 

ホルテック、競争を活用して英国の SMR製造工場用地を探索

ホルテック・インターナショナルの英国部門は、小型モジュール式原子炉(SMR)建設に向け、製造工場用地を探すコンペを開いている。 ホルテック・ブリテン社ディレクターのギャレス・トーマス氏によると、この工場は今後15年間で6億ポンド(約1,100億円)を投資し、5年以内に400人の高度なスキルを持った雇用を生み出す可能性があるという。

ホルテックSMR(画像:ホルテック)

 

アルゼンチンの研究用原子炉RA-10への据付に向け、反射体タンクを吊り上げ

RA-10炉の反射体タンクは、INVAP社によってバリローチェ原子力センター(CAB)で 32か月かけて製造された。ジルコニウム合金製、重量2,540kg、直径2m、高さ1.4m。据付準備が整ったRA-10原子炉プールの高さまでクレーンで吊り上げられ、その瞬間には、カルロス・グベルマン財務大臣、アルゼンチン国家原子力委員会(CNEA)のアドリアナ・セルキス委員長、プロジェクトに取り組むスタッフと、原子炉建設に参画するさまざまな国内企業の代表者らを含む訪問者らが立ち会った。

(画像:CNEA)

 

原子力若手グループがスペインの脱原子力に再考を求める

欧州および国際的な若手原子力ネットワークから、27カ国・70人以上の代表がマドリードに集まり、アルマラス原子力発電所1号機の計画閉鎖に反対する主張に耳を傾けた。この集会の目的は、欧州原子力学会(ENS)若手ネットワーク(YGN)および原子力青年国際会議(IYNC)の会員向けに、各国の原子力セクターでの経験を共有すること。主催者のスペイン若手ネットワークの「サルベモス・アルマラス」(「アルマラスを救おう」)の取り組みは、各国の代表から支持を得た。

アルマラスのキャンペーンTシャツを着た参加者(画像:Jóvenes Nucleares)

 

コネチカット州法案、ミルストンでの先進炉の研究を目指す

コネチカット州議会は、ミルストン発電所に先進型原子炉を建設する可能性調査を求める法案を審議している。ドミニオン・エナジーの広報担当者は、同社は原子炉のサイト内の場所を特定していないとしているが、ある議員はドミニオン側からこの原子炉は1998年に停止した1号機の代替となると伝えられたと述べている。

ミルストン発電所。 総会のエネルギー・技術委員会で現在検討されている法案は、発電所に新しい原子炉を建設する実現可能性を検討することを目的としている。

(写真:モーガン・カオリアン AEROPIX/ST)

 

フランス、長期核燃料リサイクル計画を策定

ブリュノ・ル・メール経済・財務・産業及びデジタル主権大臣は、フランスの使用済核燃料の処理リサイクル戦略を2040年以降も継続する決定を発表し、既存のリサイクル・プラントの寿命を延ばし、新たなMOX燃料加工工場と新たな使用済燃料再処理工場の研究を開始する計画を立ち上げた。この発表は、フランス原子力政策評議会(Conseil de Politique Nucléaire)が2/26に同国が閉じた核燃料サイクルの戦略を継続すると発表した数日後、ル・メール氏と大臣付産業・エネルギー特命担当のロラン・レスキュール氏がオラノのラ・アーグ再処理施設を訪問した際に行われた。ル・メール氏は、この目標に向けて①ラ・アーグとメロックスのリサイクル・プラントの寿命を2040年以降も延長する持続可能性/回復力プログラム、②ラ・アーグの施設でMOX燃料製造プラント新設の検討を開始、 ③2045年から2050年までに同じくラ・アーグに新しい使用済燃料再処理プラントの研究を開始する。

訪問中のレスキュール氏(左から2人目)とル・メール氏(中央)、ラ・アーグサイトディレクターのステファニー・ゲフ氏(左端)、オラノCEOニコラ・マエス氏(右)とともに写真撮影(画像:Orano)

 

オーストラリアのシンクロトロンが太陽光発電へ

オーストラリア原子力科学技術機構(ANSTO)のオーストラリアン・シンクロトロンの屋上に設置された約6,600㎡のソーラーパネルは、ANSTO の二酸化炭素排出量を年間 1,680トン以上の CO2 削減すると同時に、年間200万kWh以上を節約する。オーストラリアン・シンクロトロンは、メルボルン南東部のクレイトンにある主要な研究施設。 粒子加速器を収容する本館、ゲストハウス、環境制御保管施設の屋上を覆う3,200枚以上のソーラーパネルの設置が5か月かけて行われた。1,668 kWh のシステムとインバーターは、オーストラリアのシンクロトロンの総エネルギー要件の一部を供給し、今後 5 年間で約200万オーストラリアドル (1億9,000万円) の節約が期待されている。

本館の象徴である円形屋根にソーラーパネルが設置された(画像:ANSTO)

 

オンタリオ州、ダーリントン・プラントでイットリウム90を生産へ

報道によると、カナダのオンタリオ州は、BWXTメディカル社およびボストン・サイエンティフィック社と提携して、ダーリントン原子力発電所で医療用同位体イットリウム90Z(Y-90)を生産すると発表予定という。 Y-90 は、抗がん剤 セラスフィア(TheraSphere) の製造に使用される。

ダーリントン原子力発電所にある医療用アイソトープ製造用のこの装置は、「ターゲットデリバリーシステム」と呼ばれる。運営会社ローレンティス・エナジー・パートナーズによれば、これは世界最大のアイソトープ照射システム。 この機械は現在、モリブデン99 を生産しており、肝臓がんの治療に使用される医療用アイソトープであるY- 90 も生産する予定。 (写真:ローレンティス・エナジー・パートナーズ)

 

IAEA、原子力分野におけるジェンダー・バランスへの取り組みを強化

IAEA(国際原子力機関)のラファエル・マリアノ・グロッシ事務局長は、男女平等は「ただ正しいだけではなく、ネットゼロ、がんとの闘い、世界的な飢餓の撲滅には不可欠である」と述べた。事務局長は、国際女性デーに合わせたイベントFor More Women in Nuclearで、IAEAのマリー・スクウォドフスカ・キュリー・フェローシップ・プログラム(MSCFP)とリーゼ・マイトナー・プログラム(LMP)に参加した400人以上の女性がウィーンの同機関本部に集った中で講演した。 グロッシ氏はソーシャルメディアにメッセージを投稿し、彼らを「先駆者たち…原子力分野を再構築し、扉を開き障壁を打ち破るという我々の目標を体現している。世界には原子力が必要、原子力には女性が必要(#NuclearNeedsWomen)」と呼びかけた。

出席者には明確なメッセージがあった(画像:IAEA)

 

米国上院、放射線被ばくに対する追加補償法案を承認

米国連邦議会上院は、放射線被ばく補償法を5年間延長し、第二次世界大戦と冷戦時代の国防関連活動で放射線被曝したより多くの人々を対象とする法律の範囲を拡大する法案を69対30の賛成多数で承認した。 この法案が下院で可決される見通しは不透明だが、ホワイトハウスはジョー・バイデン大統領が法案に署名する意向であると示唆している。

2023/4/21、ミズーリ州ブリッジトンのウェストレイク埋立地スーパーファンド・サイト周囲のフェンスに立ち入り禁止の標識が掲げられている (AP写真/ジェフ・ロバーソン)