グロッシ事務局長がロシア・プーチン大統領と会談した。

センシティブな部分が非公開なので、どの程度の進展があったのかはわからないが、ロシア側が「成功」とコメントしているので、多くは期待できないだろう。

別途、レポートするが、事務局長は、会談後、ウィーンに戻って、国際女性デーのイベントで開会挨拶をしている。近々、来日と言う情報もある。凄まじい激務だと思う。

 

 

IAEA(国際原子力機関)のラファエル・マリアノ・グロッシ事務局長は2024/3/4の週、紛争が続く中での原子力・放射線事故の防止を目指すIAEAの粘り強い取り組みの一環として、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と会談した。

 

グロッシ事務局長は、3/6のプーチン大統領との会談は「プロフェッショナルで率直」だったと述べ、議論での焦点は、過去2年間ロシアが制圧するウクライナ南部のザポリージャ原子力発電所(ZNPP)における依然として深刻な原子力安全・核セキュリティ上のリスクを軽減することが極めて重要であるという点であったと述べた。。

 

これは2022年10月のサンクトペテルブルクでの会談に続いて2回目の会談であり、2/7にグロッシ事務局長が戦時中4度目となるZNPP訪問のため、前線を越えてから1か月後のことである。事務局長はプラントに向かう途上、キーウでウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談している。

 

「私が繰り返し述べてきたように、潜在的には国境を越える重大な原子力事故が起こる危険性を軽減するために、私は双方と話し合わねばならない。原子力災害で得をする者は誰もいないので、我々はそれを防ぐためにあらゆる手を尽くさなければなりない。これも、今週、プーチン大統領やその他ロシア高官に対する私のメッセージでもあった」と事務局長はロシアのソチで行われた会談後に述べた。

 

ソチでの議論の中で、グロッシ事務局長は、欧州最大の原子力発電所(NPP)における原子力安全・核セキュリティの状況は依然として不安定であり、紛争初期に事務局長が構築した原子力安全・核セキュリティの7つの柱のうち6つが、全くあるいは部分的に棄損されていることを改めて強調した

 

事務局長はまた、最大限の軍事的自制と、2023/5/30に国連安全保障理事会で定められた具体的な5原則の厳格な遵守を改めて求めた。

 

この週のZNPPでは、サイト駐在のIAEA専門家らは、施設からそれほど遠くないところで爆発音やその他の軍事活動の兆候を聞き続けている。この週3回、数分以内に数回連続した爆発音を聞いたほか、3/7の夕方に1回の爆発、3/8朝複数回の爆発があったとの報告を受けており、おそらくプラントに近い地域で重火器が使用されたためと思われる。

 

3/1、IAEA専門家はZNPPから少し離れた場所で爆発音を聞いた。翌朝、チームはプラント側から、多くのプラント職員が居住するエネルホダル市の市役所庁舎から数百メートルの公園地域で砲撃があったと説明を受けた。 同日遅くに現場に赴いたIAEA専門家らは、使用されたらしき弾薬の破片はすでに片付けられたとの説明を受けた。チームは損傷を受けた複数の樹木や地面の痕跡を観察したが、実際に砲撃があったかどうかを結論付けることはできなかった。

 

ZNPPにおける原子力安全・核セキュリティの脆弱な状況をさらに強調するのは、2 週間以上前の2/20、330kV電力系のうち唯一残っていた系統が切断された後、発電所は外部バックアップ電源を喪失したままでいることだ。その結果、ZNPPは、紛争前に4系統が利用可能であった750kV電力系のうち、唯一機能している1系統のみに頼っている。IAEA チームは、330 kV電力系は少なくともあと1週間は再接続されそうもない見込みだと説明を受けている。

 

ZNPP側からIAEAチームに対し、1号炉の保全活動を開始したとの通知があった。ただし、安全系設備と電気設備に関して実施予定だった保全活動は除外され、330kV電力系送が再接続されるまで延期される。

 

IAEA専門家はまた、ZNPP中央制御室の運転要員の資格認定に関する情報の収集も続けている。ロシアの連邦環境・技術・原子力監督庁(Rostechnadzor)のZNPP原子力安全・核セキュリティ検査に関する地域責任者からは、2月下旬の現地訪問中、IAEAチームに対し、運転要員の認可申請が合計143件受理され、うち91件に対して、これまでに資格認定が発給されていると報告があった。ZNPP側は、現在、同発電所の6基の原子炉が停止している状況に対応するには十分な要員がいると述べている。

 

グロッシ事務局長は、「プラントの人員配置状況は依然として原子力安全・核セキュリティにとって極めて重要な問題であり、引き続き注意深く監視していく」と述べた。

 

この週のサイトのウォークダウン中に、IAEAチームは仮設緊急時対策センターを訪問し、ZNPPでの緊急事態への備えと対応の体制が暫定緊急計画に基づいて継続されており、新しい計画が2024年に完成する予定であるとの説明を受けた。チームはまた、大規模な演習が2024年後半に計画されているとの説明も受けた。

 

さらに、IAEA専門家はZNPPの電気品倉庫と機械品倉庫を訪問し、メンテナンスに不可欠なスペアパーツが使える状態にあるかを評価し、各倉庫のスペアパーツをいくつか観察した。プラント側はチームに対し、今後の保全活動や現在の停止中の原子炉向けスペアパーツがサイトにあると説明し、スペアパーツはロシア連邦の提供によると付け加えた。

 

この週の他のウォークダウンでは、チームはZNPPにおける固体放射性廃棄物の現在の管理状況を視察し、3号炉と5号炉のタービン建屋にも立ち入った。またもアクセスには制限があった。IAEA専門家は、建屋の西側部分にも、5号機タービン建屋1階のプラント機器にもアクセスできなかった。IAEAの専門家チームは、間もなくこれらエリアにアクセスできるものと期待している。

 

フメリニツキー、リウネ、南ウクライナの各原子力発電所とチョルノービリ・サイトに駐在するIAEAチームからは、一部施設では頻繁に空襲警報が鳴るなど、困難な戦時状況にも関わらず原子力安全・核セキュリティは維持されているとの報告があった。チョルノービリのIAEA専門家はこの週初めに交代した。

 

この週、IAEAは原子力安全・核セキュリティ維持支援のため、ウクライナへの第38次物資提供を行った。汚染サーベイメータと物理的防護(P.P.)機器が、英国と欧州連合からの寄付による支援を受けて、ボストークGOK(訳注:ウラン採掘会社)とチョルノービリ原発サイトに届けられた。

プーチン大統領と握手するグロッシ事務局長(右端にロスアトム・リハチェフ総裁、グロッシ事務局長Xポストより)

ロスアトム・リハチェフ総裁(左)とグロッシ事務局長(グロッシ事務局長Xポストより)

プーチン・リハチェフ・グロッシ会談の様子(グロッシ事務局長Xポストより)

プーチン大統領と握手するグロッシ事務局長(グロッシ事務局長Xポストより)

 

グロッシ事務局長 Xポスト:

 

関連報道:

 

https://www.reuters.com/world/putin-meet-iaeas-grossi-sochi-2024-03-06/

 

ロシアメディア:

https://tass.ru/mezhdunarodnaya-panorama/20189621

https://tass.ru/mezhdunarodnaya-panorama/20189643

https://tass.ru/politika/20174287

クレムリン報道官、グロッシ・プーチン会談のZNPP関連部分は非公開

https://tass.ru/mezhdunarodnaya-panorama/20173817

https://tass.ru/mezhdunarodnaya-panorama/20173795

会談内容は「センシティブ」である

https://tass.ru/politika/20173679