ザポリージャ原発の外部電源が、750kV主系統の1系統のみに依存する状態になって10日が過ぎ、3/1中に期待されていた330kVバックアップ系統の復旧も失敗したとのロシアメディア情報がある。外部電源が非常に脆弱な状態が続いており、保全もままならない危機的な状況。

 

 

IAEA(国際原子力機関)ラファエル・マリアノ・グロッシ事務局長は、3/1、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)は、過去10日間、バックアップ(外部)電源がない状態であり、施設は6基の原子炉の冷却やその他の原子力安全・核セキュリティ機能に不可欠な外部電力を、唯一残っている750kV電力系に完全に依存していると述べた。

 

現地駐在のIAEA専門家らの報告によると、ZNPPは330kVのバックアップ系統が近く、おそらく3/1遅くにも再接続されることを期待しているが、発電所の外部電源状況は依然として深い懸念材料であるとグロッシ事務局長は述べた。

 

「紛争前に利用可能だった合計10系統(750 kVが4系統、330kVが6系統)の所外電力系統のうち、現在も稼働しているのは1系統だけだ。たとえ1系統のバックアップが再び利用可能になったとしても、十分とはとても言えない」とグロッシ事務局長は語った。

 

「欧州最大の原子力発電所が、過去18か月間に8回、外部電源の完全喪失に見舞われ、非常用ディーゼル発電機に依存せざるを得なくなった。原子力の歴史の中で、これは前例のない状況であり、明らかに持続可能ではない。私はプラントの原子力安全・核セキュリティを依然として非常に懸念している」と事務局長は語った。

 

ZNPP側は、この週、IAEA専門家に対し、330 kV電力系が再接続されるまでの間、非常用ディーゼル発電機を含む安全系設備の定期試験を除き、安全関連機器に予定されている全ての予防保全活動を延期すると通知した。

 

同プラントが引き続き危険に直面していることをさらに強調するように、IAEAチームは紛争の最前線にある同地域での爆発音やその他の軍事活動の兆候について報告を続けている。

 

2/28早朝、専門家らは発電所から少し離れたところで爆発音を聞き、その後、サイト内あるいは近傍で小火器の発砲のようなものが続いた。ZNPP側がIAEAチームに説明したところでは、露軍が近隣エリアのドローンから「プラントを防護する」措置を講じたが、ZNPP自体は攻撃されておらず、被害や死傷者も出ていないという。この事象に関するさらなる詳細はただちには得られていない。IAEA専門家は当該エリアへの立ち入りを要求したが、検査すべき損傷はなく、そのエリアはプラントの管理外であると告げられた。

 

この週初め、プラント側からIAEAチームに対し、2/25夕方にエネルホダル市で通信機器が装備された屋上を狙ったドローン攻撃があったことが窺われるとの報告があった。多くのプラント職員が住む同市では一連のドローン攻撃が報告されており、これは最新のものである。 翌日、IAEA専門家らはエネルホダルを訪れ、攻撃が行われたとされる建物を視察した。 チームは建物の外側を観察できたが、訪問時には被害の痕跡は見られなかった。

 

専門家らは一週間を通して、冷却水ポンド施設や冷却塔、スプリンクラー・ポンドなどのZNPPサイト全域をウォークダウンした。これらの設備は、原子炉6基(うち5基は冷温停止中、1基は高温停止中)に冷却水を供給している。スプリンクラー・ポンドは満水で、2023年半ばに下流のカホフカダムが破壊された後に建設された11基の地下水井戸から冷却水が供給され続けている。

 

チームはザポリージャ火力発電所(ZTPP)放水キャナルの隔離ゲートも訪問したが、ZNPP大型冷却水ポンドの隔離ゲートにはアクセスできなかった。同隔離ゲートをIAEA専門家が視認できたのは、2023年11月が最後である

 

前週にわたり、IAEA専門家は5号炉の安全システム室のウォークダウンを実施し、一部の安全系ポンプの定期テストが進行中であることを視認した。チームはサイト内に2か所ある新燃料貯蔵施設も訪問した。

 

IAEAの専門家らが過去1週間にわたって実施したウォークダウンでは、職員の立ち入りができない外周フェンス内で、2月初旬にはみられなくなっていた対人地雷が再び視認できる状態になっていることを確認した。

 

ウクライナの他の場所、フメリニツキー、リウネ、南ウクライナ原子力発電所(NPP)やチョルノービリ・サイトに駐在するIAEA専門家からは、一部の施設では空襲警報が頻繁に鳴り響く等、戦時中の困難な状況にもかかわらず、原子力安全と核セキュリティは維持されていると報告を受けている。フメリニツキー原子力発電所のチームは2/28に2回シェルター避難する必要があった。

 

エネルホダルにあるザポリージャ原子力発電所の石碑(画像:RIAノーボスチ/コンスタンチン・ミハルチェフスキー)

 

 

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https://news.ru/regions/vzryv-proizoshel-okolo-zaes/