日本経済新聞がウクライナのヘルマン・ハルシチェンコ・エネルギー大臣と、国営送配電会社ウクレネルゴのヴォロディミル・クドリツキーCEOにインタビュー。両者とも日本企業との協力に期待すると述べた。ウェスティングハウスが建設するAP1000型原子炉の開発・建設には、日本企業も大きく貢献している。ぜひ、ウクライナでも貢献してもらいたい。

一方、驚くのは、この情報をロシアのタス通信がいち早く伝えていることだ。ロシアの日本情報の報道は早い。まだ日本国内ですら広まっていない情報を、タス通信が報じているのを見て知ることがあるくらいだ。ロシアのOSINT(Open Source Intelligence)能力を誇示する意味合いもあるのかもしれない。

 

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ウクライナ・エネルギー相:原発増設で日本企業に注目
国有エネルギー企業のCEOも、日本の技術をバイオ燃料、水素に活用することを目指す

 

ウクライナのヘルマン・ハルシチェンコ・エネルギー大臣は、カーボンニュートラルとエネルギー安全保障には原子力発電が不可欠であると述べている。 (撮影:木寺もも子)

 

木寺もも子、林英樹、日経スタッフライター

2024年2月25日 日本時間06:30

 

キーウ発―ウクライナは西フメリニツキー州に建設を計画している4基の原子炉新設について日本企業に協力を求めると、ウクライナのヘルマン・ハルシチェンコ・エネルギー大臣が最近のインタビューで日本経済新聞に述べた。

 

ウクライナには4サイト15基の原子炉(訳注:フメリニツキー1,2号、リウネ1~4号、南ウクライナ1~3号、ザポリージャ1~6号)がある。 南部にある欧州最大の原子力発電所ザポリージャ原子力発電所はロシア侵略軍によって占拠され、そこにある6基の原子炉はすべて停止しており、稼働しているのは9基のみとなっている。

 

これを相殺するために、フメリニツキー原発で停止中の3号炉と4号炉の建設が再開され、3号機は2026年半ばに稼働する予定であることが2/23に明らかになった。2基の新規原子炉の建設も2024年後半に開始され、ウクライナは5年以内に4基すべてをう稼働させることを目指している。

 

ウクライナの既設原子炉15基はすべてロシア製だが、新設4基は米国の大手原子力サプライヤのウェスティングハウス・エレクトリック社が建設する予定だ。原子炉建設を欧米企業に切り替えることで、日本企業にもさらなるチャンスが提供されることが期待される。

 

ハルシチェンコ氏は「我々は日本と原子力分野、特に原子力安全・核セキュリティの点では非常に良い経験を持っている」と述べ、安全技術、発電機、タービンなどのコンポーネントの分野で協力を継続したいとの意向を表明した。

 

日本のエンジニアリング企業、IHIと日揮ホールディングスは、ウクライナが検討している次世代小型モジュール炉発電所の計画に参加する。

 

ハルシチェンコ氏は「もちろん、我々はザポリージャを取り戻すだろう。それは時間の問題だ」と述べたが、取水ダムが破壊されるなどの損傷が出ているため、「運転を開始できるようになるよう修復するにはかなりの時間がかかるだろう」と述べた。

 

そして、2050年までにエネルギー安全保障とカーボンニュートラルを達成するには、新たな原子力発電所を建設する以外に「他に方法はない」とハルシチェンコ氏は述べた。

 

ウクレネルゴのヴォロディミル・クドリツキーCEOは、ウクライナは他の欧州市場にエネルギーを供給するための費用対効果の高い場所となり得ると語る (ウクレネルゴ)

 

一方、ウクライナ最大の国有電力会社ウクレネルゴのヴォロディミル・クドリツキー最高経営責任者(CEO)も、日本経済新聞に対し、エネルギー分野での日本の協力を期待していると述べた。

 

「我々のテクノロジーに関する経験と知識を一緒に活用して、リスクを回避することができる」と同氏は述べた。

 

クドリツキー氏は、燃料電池、バイオ燃料、水素などの新エネルギー源導入のための提携関係構築に向け、複数の日本企業と協議していると述べた。 同氏は、ウクライナが1月に欧州35カ国の送配電網に正式に加わったことに触れ、「ウクライナは欧州に輸出できる」と述べた。

 

クドリツキー氏は「ウクライナの事業経費(OPEX)は欧州に比べてはるかに低く、ウクライナは高速送配電を提供できる」と述べた。

 

ウクライナのエネルギー戦略は、ロシアによるインフラ攻撃への懸念に直面している。 ロシアのミサイルは原子炉新設予定のウクライナ西部の上空も飛行している。2023年冬の攻撃により、全国の送電網と施設のほぼ50%が破壊された。

 

広範囲の電力インフラへの同時攻撃が発生しているが、最近、ロシアは、10~20機のドローンによる集中攻撃を行っている。ウクレネルゴはミサイルとドローンを組み合わせた3段階の防衛態勢を採用している。

 

クドリツキー氏は「われわれは攻撃をただ待つだけではなく、積極的に準備を進めており、これは現在うまくいっている」と述べた。

 

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