今回はほぼ定期報告と言うイメージであまり大きな動きはないが、ロシア側が少数人員による体制の正当化を着々と図りつつある様子が分かる。一方、油漏れ・水漏れのようなトラブルが放置されるなど、保全要員不足をうかがわせる情報も。

ロシア側がウクライナ軍によるものと主張するエネルホダルへのドローン攻撃の現場を、IAEA専門家が視察。ドローンの残骸は撤去された後で、どちらの軍のものかは確認されていない。そもそも軍事専門家でもないIAEAがドローン攻撃現場を視察する背景も良く分からないところがある。

いつにも増して、隔靴掻痒の感じの強いレポートだ。

 

 

2/16、IAEA(国際原子力機関)ラファエル・マリアノ・グロッシ事務局長は、IAEA専門家らはウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)の要員配置状況を引き続き注意深く監視していると述べた。

 

週初めの2/13、IAEAチームはZNPPの訓練センターとそのシミュレータ施設に立ち入り、スタッフの訓練を視察した。そこでは、中央制御室運転員が、自身が勤務する号機以外の号機向けに、追加のシミュレータ訓練を受けている姿もあった。IAEA 専門家は、ZNPP側 が、これらの運転員の「資格認定」を、6つの原子炉ユニット全体に拡大しようとしているとの説明を受けた。かつて、ZNPPの中央制御室運転員には、1~4号機向けのものと5、6号機向けのものの2種類の資格免許があった。

 

翌2/14、IAEA専門家は、ロシアの原子力規制当局である連邦環境・技術・原子力監督庁(Rostechnadzor)が2、3、4号機の中央制御室運転員の資格認定を検査する状況を視察した。IAEAチームは、ロシア連邦がZNPP向けに発行した新たな「規制」について説明を受けた。ZNPPでは、低温停止中の号機には中央制御室に少なくとも 3 人のスタッフを配置する必要があると規定されているが、高温停止中の号機(現在は4号機)では要員数を4人に増すというもの。IAEAチームは、2、3、4号機において、この要員配置要求が遵守されていることを確認した。

 

チームは、心理面評価を含む運転員の再訓練要件についても説明を受けた。訓練センターには現在、当初260人いた教官のうち119人が残っており、放射線防護や火災防護等のさまざまな分野で訓練を提供している。ZNPP側はIAEA専門家に対し、プラントには十分な有資格要員がおり、不可欠なポジションはすべて満たされていると説明している。

 

「ザポリージャ原子力発電所の要員配置状況は、戦時下での極度にストレスの多い労働環境を含め、サイトでの原子力安全・核セキュリティに関連する私の主要な懸念事項の1つであり続けている。要員数はこの2年間で半分以下に減っている。サイトは運転を停止している状態だが、依然として十分な有資格要員が必要だ。我々の専門家はこの週、要員訓練に関するさらなる情報を入手したが、これは今後も注意深く監視していく重要な問題だ」とグロッシ事務局長は語った。

 

これとは別にこの週、IAEAの専門家らは、サイトから数km離れたZNPP職員の多くが住んでいるエネルホダル市を訪れ、ロシア連邦が発表した、町へのドローン攻撃によって引き起こされた被害を検分した。

 

ZNPPを保護するための5つの具体的な原則の遵守状況を監視するというミッションに従い、IAEAチームは2/15、プラント側から2/14午後にエネルホダルが4回のドローン攻撃を受けたとの知らせを受けてから数時間後、同地への立ち入り訪問を要請し、同地に向かった。 死傷者の報告はなかった。

 

専門家らは攻撃を受けたとされる4カ所のうち2カ所にエスコートされた。その1カ所、エネルホダル市庁舎は、コミュニケーションに使用されているZNPP管理棟に隣接しており、専門家らは、一部の破損した窓や建物の瓦礫に加え、市庁舎ビルのファサードがひどく損傷しているのを観察した。しかし、チームは、ドローンの残骸は撤去されたと説明を受け、実物は見ていないため、観察された損傷が前日のドローン攻撃に直接関係しているのか、それとも以前に受けた損傷の結果であるのかを確認できなかった

 

もう1カ所、学校の校庭では、IAEAの専門家は、窓が割れているのを観察した。ドローンの残骸はなく、チームには到着前に撤去されたとの説明があった。

 

この1週間にわたり、IAEA専門家らは ZNPPから少し離れた場所での爆発音を聞き続けており、原子力安全・核セキュリティに対する潜在的リスクを常に意識させられている。グロッシ事務局長は、具体的な5原則に沿って、欧州最大の原子力発電所(NPP)に脅威を与える可能性のあるいかなる軍事行動も自制するよう、すべての当事者に改めて呼びかけた。

 

ZNPPサイトでは、IAEAの専門家がウォークダウンを継続しており、原子炉建屋、安全システム室、タービン建屋、2号機の非常用ディーゼル発電機などを視察した。

 

チームは、使用済燃料プール冷却ポンプ付近で潤滑油が流出し、同じ安全設備の別のポンプで水漏れが発生しているのを目撃した。その後、ZNPP側からIAEA専門家に、流出油は清掃したと報告があった。IAEAの専門家は引き続きこれらの問題を注視している。

 

チームの2号機タービン建屋西側への立ち入りは、またも許可されなかった

 

IAEAチームからはまた、サイトに4基ある新しいディーゼル蒸気発生器が、たまっていた廃水の処理が終わったのを受けて、前週、停止されたとの報告があった。チームには、処理が必要なほどの廃水がまた蓄積したら、また、運転再開する予定との説明もあった。

 

最近の気温の上昇により、プラントに9基ある可搬式ディーゼル・ボイラーは運転停止状態を保っている。地域暖房は、ザポリージャ火力発電所及び一般産業エリアにある大型ボイラーと、高温停止状態の4号機によって賄われている。

 

ウクライナの他の原子力発電所4サイトのチームも、頻繁な空襲警報にもめげず活動を続けている。フメリニツキー原子力発電所 (KhNPP) のチームは2/9と2/14にもまたシェルターへの避難を求められ、リウネ原子力発電所のチームも2/15にシェルターへ避難した。チョルノービリ・サイトのIAEA専門家はこの週に交代し、現在、第22次専門家チームがサイトに駐在している。

 

IAEAはまた、機器の提供やその他の支援を通じて、ウクライナでの原子力安全・核セキュリティを引き続き支援している。この週、サンプル中の放射性核種組成の特定と分析に使用されるスペクトロメータ並びに危険物のラボでの安全な取り扱いを支援する機材が、日本と欧州連合からの特別拠出金で調達された。KhNPPと南ウクライナ原子力発電所がこの装置を受領した。追加のスペクトロメータもウクライナ向けに調達されており、今年中に納入される予定。この週の分で、2年前に紛争が始まって以来、37回目の物資提供となった。

 

ロシアのイズベスチヤ紙の関連記事掲載写真、IAEA専門家が検分したと言う校庭か?

写真: Commons.wikimedia.org/Fedya Kuznetsov

 

関連報道(ロシアメディアばかり):

https://tass.ru/mezhdunarodnaya-panorama/20011491

 

https://iz.ru/1651653/2024-02-16/eksperty-magate-posetili-energodar-dlia-otcenki-ushcherba-ot-udara-drona