4/20追記:

この記事へのアクセス数がとびぬけて多くなっています。お読みくださる方々には感謝しています。

筆者本人も理由が良く分からないでいるのですが、恐らく、トリチウムが核融合炉の燃料であるというのが意外だったのかなと推測しています。下記のサイトが参考になります。

ただ、筆者の意図は核融合炉をディスることでなく、ALPS処理水中のトリチウム量は、実にバカバカしいほど少ないということをご理解いただきたいということの方が主眼です。以下はご参考。福島にたまっているトリチウム水(HTO)の重量は全量でたった15グラム。トリチウム原子だけだと、2グラムちょっと程度しかないのです。ベクレルと言う単位を使うとものすごい数字になるのでギョッとしますが、グラム換算するとこんなもの。トリチウムだけを集めて固体にできれば(それが全くできないので苦労しています)、その重さは1円玉2枚分くらいしかないということです。

 

一方で、核融合炉は放射性物質とまったく無縁であるかのような「誇大広告」をする人もチラホラ見かけます。それも全くの「ウソ」です。そこもご理解いただきたいとも思っています。

フランスで建設中の国際熱核融合実験炉ITERは巨大システムですが、発電は全くできません。実験だけです。発電を行うのはその次の段階の原型炉(DEMO)と言われているものですが、運転開始するときに必要なトリチウム量は数百グラム~キログラムオーダーと評価されています。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaesjb/60/8/60_488/_pdf/-char/en 図2付近を参照

どうですか?ALPS処理水中のトリチウムは2グラム程度ですから、核融合発電しようとすると、初装荷分だけでその数百倍が必要ということですね。

以上、追記終わり。

 

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福島第一の処理水で有名になったトリチウム(三重水素)だが、核融合、別名フュージョンの燃料は、このトリチウムに他ならないことをご存じだろうか?

核融合炉に「くべる」トリチウム量は、福島処理水タンク内の総量など全く比較にもならない、桁違いの大量だということを、この機会に頭の片隅にでも置いてもらえれば幸いである。下記のカナダと英国の提携は、核融合炉でのこのトリチウムのリサイクルに関するもの。

 

  • ロシア大統領報道官:プーチン大統領にはグロッシ事務局長との会談予定なし
  • プロジェクト・フェニックスが進展し、スロバキアのSMRに工程感
  • 米国原子力学会、軽水炉のリスク情報活用・パフォーマンスベース設計基準について対話を要望
  • GNFが高濃縮燃料の製造承認を取得
  • 核融合開発に向けカナダと英国が提携、トリチウムマネジメントが焦点
  • ベルギー、金属製錬設備開発プロジェクトを立ち上げ
  • 英国会計検査院がセラフィールドの経営を調査へ
  • ユーチューバー・カイル・ヒル、ユーモアを交えて原子力を支持
     

ロシア大統領報道官:プーチン大統領にはグロッシ事務局長との会談予定なし

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領のスケジュールには、IAEA(国際原子力機関)のラファエル・グロッシ事務局長との会談はまだ含まれていない。 これは2/15(木)、ドミトリー・ペスコフ大統領報道官が発表した。「今のところ(この会合は)予定されていない。 大統領は現在非常に多忙なスケジュールを抱えている」と関連質問に答えて述べた。グロッシ氏は2/6(火)、ロシアを訪問すると発表し、訪問は「次週」と述べていた。 同時に、駐ウィーン国際機関のロシア連邦代表ミハイル・ウリヤノフ大使は、グロッシ氏が今月中旬にモスクワを訪問すると報じている。

グロッシ事務局長(写真: Global Look Press/EuropaNewswire/Luiz Rampelotto)

 

プロジェクト・フェニックスが進展し、スロバキアのSMRに工程感

米国が資金提供するプロジェクト・フェニックスの一環として実施中のスロバキアにおける小型モジュール型原子炉(SMR)のフィージビリティ調査では、2035年までの工程表を示しながら可能性を調査している。スロバキア電力(SE)はこのほど、同プロジェクトでの実施パートナーであるサージェント&ランディ社のスタッフがスロバキアを訪問し、国内でのSMR建設の実現可能性調査のため、サイトでの初期現地調査を実施したと発表した。 一行はSEのボフニチェ及びモホフチェ原子力発電所、ノバキ及びボヤニ石炭火力発電所を訪問した。プロジェクト・フェニックスは、2022年のCOP27気候会議でジョン・ケリー米国大統領気候変動担当特使(下の写真)によって発表され、石炭火力発電所からSMR発電所への転換の道筋を作ることで、エネルギー安全保障と気候目標をサポートすると同時に、従業員の再訓練を通じて地域の雇用を維持することを目的としている。

ジョン・ケリー氏は2022年11月のCOP27でこのイニシアチブを立ち上げた(写真:在米ウクライナ大使館)

 

米国原子力学会、軽水炉のリスク情報活用・パフォーマンスベース設計基準について対話を要望

米国原子力学会(ANS)は、NRC(原子力規制委員会)に対し、同学会の規格ANSI/ANS-30.3-2022「軽水炉のリスク情報に基づくパフォーマンスベースの(RIPB)設計基準」に関する公開会議の開催を要請した。 「ANS規格委員会は、原子力安全基準の近代化を進めるための重要な貢献として、この規格の規制当局の承認を求めている」と規格委員会のアンドリュー・ソーダー委員長は述べている。

規格表紙(画像:米国原子力学会)

 

GNFが高濃縮燃料の製造承認を取得

米国NRC(原子力規制委員会)は、GEベルノバ社の核燃料事業に対し、最大8%までのウラン235濃縮度を有する核燃料の製造、輸送及び燃料健全性解析を承認した。NRCが認可変更を承認したことで、ノースカロライナ州ウィルミントンのグローバル・ニュークリア・フュエル(GNF)社のプラントは、重量割合で最大8%(8wt%と表現)のウラン235(U-235)を含む濃縮ウラン燃料の製造が認可された米国初の商業施設となった。NRCは、GNFが同社のRAJ-II型輸送容器を使用して最大8%濃縮ウランを含む燃料集合体を輸送することを許可する適合証明書を発行した。また、GNFが5wt%を超える濃縮度の燃料を解析できるようにした高度な原子力解析法に関するトピカル・レポートの認可も承認した。(このような最大10% までの U-235を含む燃料はLEU+ と呼ばれることもある)

GNFのプラントは濃縮度8%の燃料の製造を認可された(画像:GEベルノバ)

 

核融合開発に向けカナダと英国が提携

英国原子力公社(UKAEA)とカナダ原子力研究所(CNL)は、核融合エネルギーの燃料として使用される水素の同位体であるトリチウムの管理に関する技術開発で提携する協力枠組み協定に署名した。この提携の主な焦点は、核融合燃料サイクル内での水素同位体管理、すなわち燃料を安全に取り出して処理し、継続的にプラズマに再注入することである。 水素同位体管理は核融合燃料サイクルの重要な部分。トリチウムは、核融合燃料としてリサイクルして再利用できるよう、排気ガス中の他の水素同位体から分離する必要がある。 トリチウムは自然界では希少であり、トリチウムを効率的に管理することは、核融合エネルギーの商業的実現可能性にとって極めて重要だ。

CNLのイアン・カスティージョ氏(左)とUKAEAのスティーブン・ウィーラー氏(画像:UKAEA)

関連報道:

https://www.reuters.com/business/energy/britain-canada-sign-deal-collaborate-fusion-energy-2024-02-14/ 

 

ベルギー、金属製錬設備開発プロジェクトを立ち上げ

ベルギー原子力研究センター(SCK-CEN)と同国冶金研究センター(CRM)が、原子力発電所の解体によって生成される金属向けの先進的製錬設備を開発するプロジェクトについて、欧州委員会(EC)が承認した。2023年6月、ベルギー政府は同国の「復興・強靱化計画」に基づき、SMELD(除染・廃止措置(D&D)廃棄物を低減する先端的金属溶解の略)プロジェクトに1,350万ユーロ(21.8億円)の資金を割り当てた。 このプロジェクトは、解体時に発生する金属からリサイクルできる量を増すことができる施設の開発を目的としている。そのままリサイクルはできないが、放射性廃棄物として処分するほどでもないレベルの廃棄物に焦点を当てている。

CRMグループのユーリ・ノイチェンスCEO(左)とSCK-CENのペーター・バーテンCEO(右)が研究パートナーシップ契約に署名(画像:SCK-CEN)

 

英国会計検査院がセラフィールドの経営を調査へ

英国会計検査院(NAO)は、同国最大の放射性廃棄物サイトであり世界のプルトニウム貯蔵庫でもあるセラフィールドの経営と財務を調査している。 NAOは2018年にも、1万1000人の従業員と1000以上の建物で構成される同サイトの調査を立ち上げている。

セラフィールドは欧州で最も毒性の高い原子力施設でもある。写真: デビッド・レビン/ガーディアン紙

 

ユーチューバー・カイル・ヒル、ユーモアを交えて原子力を支持

科学教育者で科学愛好家のカイル・ヒル氏は、使用済燃料がどのように安全に保管されているかをデモンストレーションするために、イリノイ州にあるコンステレーションのドレスデン原子力発電所を訪問した。この娯楽性ある YouTube では、使用済燃料施設は「基本的にスーパーマン」に耐えられるように作られていると宣言しており、3か月で100万回の再生回数を記録した。

カイル・ヒルはドレスデンの使用済燃料キャスクを高評価 (写真: カイル・ヒル)