国内の話題は多くのメディアや専門家が取り上げるので、このブログではあまり話題にしないが、気になる情報があったので少し整理しておきたい。

 

1月10日に開催された原子力規制委員会の資料に、以下のような記述があり、報道もされているようだ。

「北陸電力からの報告によると、観測された地震動の加速度応答スペクトルは、一部周期帯において、設計上考慮している加速度(Ss-1)をわずかに上回っていることを確認したとしている。ただし、該当周期帯に固有周期を持つ安全上重要な施設はないとしている。」

ここで、「設計上考慮している加速度」には注釈があり、「耐震バックチェック時の数値」とされている。

 

専門家なら、だいたい、この注釈で状況が分かる。

 

耐震バックチェックと言うのは、2011年の東日本大震災、福島第一原子力発電所の事故が起こるより前に、1995年の阪神・淡路大震災後、2006年に改訂された耐震基準に耐えられるかどうかを、耐震解析でチェックした一連の活動を言う。

 

現在の新規制基準は、更に規制体系も実態も強化されている。

志賀原子力発電所が想定する地震動は、耐震バックチェック時には600ガル、新規制基準では1,000ガルである。

 

現在、志賀原子力発電所2号機は、新規制基準の審査が進行中であり、新規制基準の下で想定する地震動は確定していない。

当然、再稼働はまだ認められていない。

 

ただし、耐震強化工事は2015年からすでに着手されていた。

https://www.rikuden.co.jp/anzentaisaku/kijun/img/pamphlet.pdf

 

今の志賀原発の耐震性は、耐震バックチェック時よりもすでに高まっている。

 

そこで、今回上回ったというのが以下のグラフである。(左が1号。右が2号)

1号は、周期0.47秒のところで、設計想定918ガル(細い実線)のところ、957ガル(太い点線)を観測

2号は、周期0.47秒のところで、設計想定846ガル(細い実線)のところ、871ガル(太い点線)を観測

見ての通り、ごくわずかであり、グラフを見ただけでは超えているのかどうかもよく見えない。

https://www.nra.go.jp/data/000465120.pdf

 

また、各周期帯にいろいろな機器名が書かれているが、この周期での振動で強い影響を受ける(共振)する機器を表している。

御覧の通り、0.47秒で大きな影響を受ける重要な機器はない。

 

以上のように、設計想定を超えたとしているが、その想定自体が現在よりも古いものであり、実態の耐震性は向上しつつあること、超えた量のごくわずかである。また、進行中の審査の中で今回の知見を反映していくと、原子力規制委員会委員長も明言していることから、この話題はそれほど大きな問題とはとらえられていない。

https://www.nra.go.jp/data/000465434.pdf