フィンランドの作曲家、ジャン・シベリスス(1865~1957)の晩年の創作期に作曲されたピアノ曲を紹介する。
『5つのロマンティックな小品』と題された作品は、1923年、交響曲第6番と同じ頃に作曲されたいたものである。しかしながら、晩年のシベリウスの作品にありがちな晦渋な音楽とは正反対といえる程に、美しくかつ親しみやすい音楽が特徴的な小品集といえる。
第1曲目から順に、『ロマンス』『夜の歌』『叙情的な情景』『ユモレスク』『ロマンティックな情景』と題されており、第1、2、5曲目は殊にロマンティックな音楽といえる。1900年以降に作曲された作品頃から、フランス印象派の影響が見えてきた彼の作品ではあるが、この作品はまさにその典型的な例といえる。ドビュッシー的ではないにしろ、実に水彩画的な響きである。
田部京子の録音もまた、抑制された大人の色気を感じさせる雰囲気が印象的である。過度な感情表現を抑え、水彩画的な雰囲気を前面に押し出した「田部らしい」叙情性が魅力的な録音といえる。
【CHANDOS:CHAN 9833(輸)】