フランスの作曲家、エリック・サティ(1866~1925)は奇妙な曲名の作品を数多く残した人物として有名と言える。ここで紹介する『4つのしまりのない前奏曲』もその代表的な作品と言え、『犬のためのぶよぶよとした前奏曲』の名前でご存知の方も多い曲だ。
1912年に作曲されたこの作品は、曲名とは相反して実に真面目な作品と言えるだろう。「おふざけ」はタイトルだけといった感じで、4つの前奏曲はそれぞれ、1分少々の短い中に犬に纏わる心情を表現するかのような端的な描写となっているといえる。曲名によって作品を判断する人々に対する批判的な意味合いも込めたアンチテーゼ的な作品と言え、皮肉たっぷりの作品ともいえるだろう。
第1曲から順に、「内奥の声」「犬儒学派的牧歌」「犬の歌」「友情を持って」と題されているこの作品を、パスカル・ロジェのピアノは過度な脚色の一切を排除し、シンプルなまでにあっさりと仕上げている。サティの世界を体感するには、最適な演奏といえるだろう。
パスカル・ロジェ[1983年5月録音]
【DECCA:UCCD-5090】