「子供の情景」といえば数多くの演奏家が録音し、名演も多々ある。そんな中であえて紹介するのが巨匠・ケンプの録音だ。ドイツ古典派、ロマン派を得意のレパートリーとしていた彼の1971年の録音は、円熟の窮みとでも表現するのが適当かもしれないその、落ち着きと滋味深い語り口が特徴的といえる。まさに滋味である。あっさりしているわけでもないのだが、切々と語りかけてくるわけでもなく・・・。しかしながらシューマンの詩情豊かな「子供の情景」を描き分けている。聞き込めば聞き込むほどに名匠の凄さを感じられる録音といえる。

【推奨盤】
乾日出雄の揺蕩うクラシック音楽の臥床
ヴィルヘルム・ケンプ(Pf)[1971年3月録音]
【DG:UCCG-5070】