日本の吹奏楽界を代表する気鋭の作曲家、樽屋雅徳(1978~)の魅力が凝縮した逸品を紹介する。
『マゼランの未知なる大陸への挑戦』と題されたこの作品は、変化に富んだ曲想とロマンティックな作風が魅力といえる。さながら「パイレーツ・オブ・カリビアン」を彷彿させるような曲調も登場するなど、吹奏楽ならではの音響効果にも優れた演出が見られる起伏に富んだ作品といえる。
因みに、この作品のスコアに作曲者は次のように記している。
『大航海時代、世界一周の偉業を成し遂げたマゼラン一行ですが、マゼラン本人は航海中に死んでしまいます。歴史に「if」はありませんが、「もしマゼランの魂が現生に残り、世界一周を続けたなら・・・」と“未知なる”マゼランの航海をイメージしてイメージして作り上げました。(・・・以下省略)』
・・・だそうな。
秋山和慶が指揮する大阪市音楽団の演奏はこの作品の魅力を最大限に表現してくれている。日本のクラシック界を代表する御大が駆け出しの吹奏楽作曲家の作品を熱演しているこの演奏こそ何とも言い難い感動を呼んでいる。劇的にして抑制されたパッションの表出は秋山の真骨頂であり、この演奏は古今の吹奏楽の録音の中でも際立って秀逸だと感じる。
【CRYSTON:OVCC-00043】