ノルウェーを代表する作曲家、エドヴァルド・グリーグの組曲『十字軍の兵士シーグル』を紹介する。


『ペール・ギュント』を完成させる3年前に手がけた劇付随音楽である『十字軍の兵士シーグル』ではあるが、劇そのものはあまり評判にもならず、忘れ去られてしまった。グリーグはそこで、3曲を選び、演奏会用組曲に誂え直したものが今日演奏されている組曲である。


3曲のタイトルはそれぞれ「前奏曲~王宮にて」「間奏曲~ボルグヒルの夢」「忠誠行進曲」と題されており、劇そのものは「十字軍の遠征を舞台とする国民的英雄シーグルの活躍」を描いたものといわれている。曲は全曲に亘ってグリーグらしい、甘美でかつ優美で抒情的な旋律に富んでいる。第2曲ではさながら『ローエングリン』の「エルザの夢」をも彷彿とする美しさは白眉といえる。


ヤルヴィの演奏も、北欧音楽に手慣れているだけあり実に心地良い響きを奏でている。好演といえる。

【推奨盤】
乾日出雄の揺蕩うクラシック音楽の臥床
ネーメ・ヤルヴィ/エーテボリ交響楽団[1987年6月録音]
【DG:427 807-2(輸)】