日本を代表する作曲家、團伊玖磨(1924~2001)が残した数多い合唱曲の中でも圧倒的な人気と知名度を誇る『筑後川』を紹介する。
團伊玖磨の作品群の中で特徴的なのは、都市名や地方の風物など、地方・地域の特色を活かした作品を数多く残している点だ。この『筑後川』はその先駆けであり、この作品の成功が彼にそのような作品を委嘱する団体が増えた理由といっても過言ではない。
『筑後川』は福岡県久留米市で活動する久留米音協唱団の委嘱により作られたもので、源流から河口までを辿る「音の風景画」といえる内容だ。「みなかみ」「ダムにて」「銀の魚」「川の祭り」「河口」の5つの部分から成っており、風光明媚な日本情緒に溢れた憧憬を存分に表現している。終曲の「河口」は、合唱経験者ならば誰もが一度は耳にした事があるだろう。
ここで紹介する管弦楽版は新進気鋭の指揮者、山田和樹が指揮をしている。第4曲「川の祭り」で聞かせる躍動感は山田の師である小林研一郎を彷彿とさせるパッションを感じる事ができる。もちろん、山田の魅力であるカンタービレも全曲に亘って堪能できる演奏だ。
【推奨盤】
山田和樹/東京混声合唱団/東京交響楽団[2010年3月録音]
【EXTON:OVCL-00425】