第一次世界大戦従軍中に右手を失ったピアニストの依頼を受け作曲された、ラヴェルのピアノ協奏曲を紹介する。

ラヴェルが作曲したピアノ協奏曲は生涯で2曲あるが、その作曲時期は同じ時期であり、作品の内容も「ジャズの要素を多分に取り入れている」点で同じ性格を持っている。相違点といえば、両手なのか片手なのか、という点だけといっても過言ではない程だ。

曲は単一楽章であり、続けて演奏される3つの部分から構成されている。コントラバスとコントラファゴットによる重々しい序奏がなんとも暗澹たる空気を醸し出しているが、曲がその空気に支配されるというわけではない。ピアノのカデンツァの後には、ジャスの要素を感じさせるリズムが印象的だ。ラヴェルらしい色彩感覚に優れたオーケストレーションとピアノの技巧を存分に味わうことのできる作品で、ピアノが片手だけで演奏されているとは思えないほどに、ボリューム感は満載だ。


【推奨盤】
乾日出雄の揺蕩うクラシック音楽の臥床

クラウディオ・アバド/ミシェル・ベロフ(Pf)/ロンドン交響楽団[1984年2月録音]

【DG:POCG-7105】