ジャズ・クラリネット奏者で長年に亘り日本のジャズ界を牽引してきた北村英治(1929~)は、80歳を超えても衰えを一切感じさせないパフォーマンスで今も、聴き手を魅了し続けている。そんな彼を尊敬し追いかけ続けてきたのが、谷口英治であり、そんな日本のジャズ・クラリネット界の人気を二分している「英治」二人が会したセッションがこの録音である。


北村が残したオリジナル作品『さつきに寄せて』を2本のクラリネットが奏でるのだが、スイング・ジャズでありながら全く古さを感じさせない今を生きるモダンなジャズの佇まいといえる。まさに「モダン・スイング」の王道ともいえるかもしれない。他に併録されている演奏も然りだが、北村、谷口両者の互いを尊重しあい、引き立てあう紳士的な演奏となっているのが聴いていて自然と笑顔に包まれる暖かい空気が何とも心地よい。
二人の演奏を際立たせている、右近茂のテナー・サックス、片岡雄三のトロンボーンも一線で活躍しているだけあり、聴き手を呻らせてくれる。これこそ、語り継いでほしい名盤だ。

【推奨盤】
乾日出雄の揺蕩うクラシック音楽の臥床
谷口英治(Cl)/北村英治(Cl)/右近茂(Ts)/片岡雄三(Tb)/袴塚淳(Pf)/ジャンボ小野(B)/山下暢彦(Ds)[2009年6月録音]
【ART UNION:ARTCD-115】