アメリカを代表する作曲家、ファーディ・グローフェ(1892~1972)は音楽史上において二つの大きな仕事を成し遂げたといえる。まず一つは、ガーシュウィンが残した『ラプソディー・イン・ブルー』のピアノ・スケッチをオーケストレーションした事。もう一つが、組曲『グランド・キャニオン』の作曲である。
今日紹介する作品はその組曲『グランド・キャニオン』である。その名の通り、アメリカ・アリゾナ州にある国立公園「グランド・キャニオン(大峡谷)」の憧憬を音楽によって表現している、さながら、「アメリカ版アルプス交響曲」の様相を呈している作品だ。
第1曲から順に「日の出」「いろどられた砂漠」「山路にて」「日没」「豪雨」と題されたおり、特に第3曲の「山路にて」は単独でも演奏される機会があるほどに有名である。驢馬の嘶きや蹄の音、カウボーイが口ずさむ歌などを軽妙に取り込み、アメリカ西部の風景を活き活きと的確に描写している。
全体で30分に及ぶ作品であるが、アメリカ音楽らしい理解しやすい、ライトな音楽であり実に聴きやすい。バーンスタインの演奏も頗るダイナミックで、彼らしさを体感できる。

【推奨盤】
乾日出雄の揺蕩うクラシック音楽の臥床
レナード・バーンスタイン/ニューヨーク・フィルハーモニック[1963年5月録音]
【SONY CLASSICAL:SRCR 9945~6】