ロシアの作曲家、プロコフィエフが16歳の時に書いたソナタを、自ら改作した作品といわれるこの第3番。タイトルにある『古いノートから』とは、それを意味しており、作曲活動が軌道に乗っていたプロコフィエフの作品に対する、ある種の「言い訳(笑)」じみた命名ともとれる。

作品は単一楽章の構成だが、強烈な運動や相反する叙情、古典と前衛など、スムーズな音楽の流れの中で目まぐるしく変容する憧憬は、若かりしころの草稿が既に彼の音楽的成熟を成し得ていたともいえ、その草稿を見事なまでに10年後の自分のスタイルに嵌め込んだ技量もまた流石というしかない。

日本におけるロシア音楽のスペシャリスト、有森博のピアノで聴くと、この曲が持つ豊かな表情が際立って聴こえてくる。短いながらも聴き応えの作品といえる。



【推奨盤】

乾日出雄の揺蕩うクラシック音楽の臥床


有森博(Pf)[2002年5月録音]

【fontec:FOCD3496】