アミルカーレ・ポンキエルリ(1834~1886)はイタリアのオペラ作曲家として、ヴェルディの流れを汲み、プッチーニを育て上げた人物である。ワーグナーの研究家としても知られワーグナーをイタリア楽壇に紹介した事でも功績を残している。


そんな作曲家、ポンキエルリの名前を『ジョコンダ』以外では目にすることは殆どない今日である。特に第3幕の舞踏会のシーンでの音楽(時の踊り)は、オーケストラのコンサートピースとしても単独で演奏される機会に恵まれている。17世紀のヴェネツィアで起きた美しい歌姫ジョコンダの悲しい恋を描いた長大なオペラであるが、誰もが耳にする機会がある「時の踊り」は第3幕第2場の舞踏会のシーンで登場する。暁から真夜中までの時の移ろいを光と衣装の転換で演出しており、音楽もまさにそれを表現しているといえる。他にも豊饒な音楽に溢れており、演奏機会に恵まれないのが残念だ。

この録音ではタイトルロールをヴィオレッタ・ウルマーナが歌っているが、彼女の歌唱力は圧巻である。この作品の最も大きな障壁であるソプラノ歌手の音域の広さを、あっさりと超越してしまっているウルマーナの存在は、このオペラに限らず、多くのオペラで重宝するに違いないだろう。

【推奨盤】

乾日出雄の揺蕩うクラシック音楽の臥床
指揮:マルチェッロ・ヴィオッティ

合唱:バイエルン放送合唱団(合唱指揮:ウド・メールポール)

児童合唱:ミュンヘン児童合唱団(フランツ・フランク)

管弦楽:ミュンヘン放送管弦楽団

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歌姫ジョコンダ:ヴィオレッタ・ウルマーナ(S)

ラウラ・アドルノ:ルツィアナ・ディンティーノ(Ms)

裁判官アルヴィーセ・バドエロ:ロベルト・スカンディウッツィ(B)

ジョコンダの盲目の母親チエカ:エリザベッタ・フィオリッロ(A)

貴族エンツォ・グリマルド:プラシド・ドミンゴ(T)

密偵バルナバ:ラード・アタネリ(Br)

ズアーネ及び歌手:パオロ・バッタリア(B)

イセポ:クリスティアン・ベネディクト(T)

水先案内人:ディム・ヘニス(B)

バルナボット:ヴォルフガング・クローゼ(B)

遠くの声:ハンス・ヴェルナー・ブンツ

別の声:ヴィルフリート・フォアボルト

[2002年7月~8月録音]

【EMI:TOCE-55562~64】