戦中に作られた行進曲は「いかにも」戦意高揚のための軍歌そのものといった感じの曲が多いが、曲によっては美しい中間部を兼ね備えていたり、親しみ易い曲調だったりと、魅力的な「作品」も数多い。
そこで今日は斎藤丑松(1912~1994)が残した行進曲『愛国』を紹介する。トリオ部で、「見よ東海の空明けて~♪」の詞で有名な瀬戸口藤吉の愛国行進曲の旋律が用いられていることから名付けられたとされるこの作品。音楽自体がそのトリオ部になった途端に表情が変わるのは不思議なものである。さすが瀬戸口藤吉といっていいものか否かだが…。名行進曲とされる瀬戸口の行進曲の旋律を原曲で聴くのもいいが、斎藤のこの行進曲で活きる瀬戸口の旋律もまた面白く、佳作といえる。
【推奨盤】
吉永雅弘/陸上自衛隊第1音楽隊
【UNIVERSAL:UCCS-1021】