スウェーデンの作曲家、ヒルボルイ(1954~)の代表作である『ムウヲオアヱエユイユエアオウ』を紹介する。

1983年にスウェーデンの国立協会の委嘱で作曲されたもので、かなりの異彩を放った作品だ。歌い出しの詩(?)を、そのままタイトルとしているが、そもそもこの曲の詩には何の意味もない「音」であり、その「音」は微妙に変容しながら曲は進行していく。16声部から成り、とにかく「声」の限界に挑み続ける作品。およそ13分で、只管に響きを追求し続ける、さながら機械処理されたかのような神秘的で無機質な異次元の世界へと聴き手を誘うのだ。ちなみに、作曲家本人によると「オーロラ」からインスピレーションを受けているそうな・・・。

実演ではスウェーデン放送合唱団やオルフェイ・ドレンガーで聞いたことがあるが、何度聴いてもその神秘的な響きに魅せられ、合唱団の技量の高さに舌を巻く作品である。


【推奨盤】
乾日出雄とクラシック音楽の臥床
ガリー・グラーデン/聖ヤコブ室内合唱団[1996年10月録音]
【BIS:CD-789(輸)】