リヒャルト・シュトラウスが残した幾つかの無伴奏合唱曲は管弦楽曲で聞かせる壮大さ、絢爛さとは裏腹に、静謐で甘美な作品が多く、実に美しい。

ここで紹介する『2つの歌』もまた、それらに際立っている作品だ。第1曲が『夕べ』、第2曲が『讃歌』と題されており、16声部から成る無伴奏合唱曲である。とりわけ、第1曲が美しい。タイトルの通り夕闇に包まれた風景を描写している。極上のハーモニーを堪能することができる作品であり、仄かに神秘的でもある。ピアニッシモで表現される深遠な響きは秀逸であり、ここで紹介するパルクマンの演奏はその醍醐味を極めているといえる。合唱のメッカである北欧の合唱団ならではの表現力であり、無駄の一切を排除した清澄な音楽は流石である。

【推奨盤】
乾日出雄の揺蕩うクラシック音楽の臥床
ステファン・パルクマン/デンマーク国立放送合唱団[1993年5月録音]
【CHANDOS:CHAN 9223(輸)】