チャイコフスキーが残したこの交響的バラード『地方長官』は最近はあまり演奏会で取り上げられる機会が少ない。作品を聴くと分かるがいかにもチャイコフスキーらしい音楽的な「光と影」「陰と陽」を体感できる作品といえる。同名の歌劇とは全く別のもので、彼が亡くなる3年前に作曲している。地方長官の横暴な所業が人々の恨みを買い。最後はピストルで撃ち抜かれてしまうという物語を元に作曲しており、楽しい曲というわけではない。しかしながら、熱いパッションと甘美にして哀感を帯びたメロディが織り成すチャイコフスキーの世界はこの作品の中でも健在で、もっと演奏されて良い佳品といえるだろう。
【推奨盤】
エフゲニー・スヴェトラーノフ/ロシア国立交響楽団[1993年&1996年録音]
【CANYON:PCCL-00574】