モーツァルトの晩年の最高傑作といわれる《魔笛》の録音を紹介する。数多くの録音が残されているものの、「これ」という名演となると、あまり存在していないような気がするこの作品。難解で突飛なストーリーと登場人物の多さもそれに起因している気がするが・・・。
ということで、今日紹介する録音は決して名盤とは言い難い。しかしながら、安心して聴ける要素は豊富に含まれているといえる。ガーディナーによる《魔笛》である。イングリッシュ・バロック・ソロイスツとモンテヴェルディ合唱団という、彼が手の内に入れているオーケストラと合唱団だけあり、彼らを無駄なくシンプルに操っている。派手さは微塵も無いが、要所で聞かせるアクセントは絶妙。各ソリストも無駄な装飾を取り払い、モーツァルトのサウンドを「綺麗に」表現しているといえる。個性が無い演奏にも聞こえてしまうかもしれないが、贅肉のついていないスマートな演奏こそ、モーツァルトを演奏する上で(聴く上で)は、最も必要なアイテムであると感じる自分。
モーツァルトの醍醐味を十二分に堪能できる演奏といえるだろう。
【推奨盤】
ジョン・エリオット・ガーディナー/モンテヴェルディ合唱団/イングリッシュ・バロック・ソロイスツ/他[1995年録音]
【ARCHIV:449 166-2(輸)】