アーサー・サリヴァンの名前は「ギルバート&サリヴァン」として世に出た『ミカド』や『軍艦ピナフォア』に代表される13の作品が大変有名ではある。ここで紹介する『コックスとボックス』はそのヒットメーカーの二人を引き合わせる事となった作品といえる。26歳だったサリヴァンが書いた『コックスとボックス』は、3人の登場人物による演劇的小喜歌劇はであり、当時のイギリスで大ヒットを果たし、5歳年上の劇作家、ギルバートの目に留まったのである。度々、『コックスとボックス』もギルバートとサリヴァンの作品だと混同されることがあるが、それは大きな誤解である。


作品の内容自体は簡潔明瞭。『一つの部屋』に纏わる、狡賢い元義勇軍軍曹の家主と夜の住人の帽子職人(コックス)、昼の住人の印刷屋(ボックス)によるドタバタ劇である。全体で30分程の作品だが、「ベーコンの子守唄」や「ラタプランのマーチ」など、親しみやすい音楽に溢れており、演奏される機会が殆ど無いのが淋しいくらいだ。
ヒコックスが奏でる音楽もメリハリを利かせてサリヴァンの魅力を最大限に表現されている。
聴く度に、この作品とこの録音が再評価されるべきだと、感じずにはいられない自分である。

【推奨盤】
乾日出雄とクラシック音楽の臥床
指揮:リチャード・ヒコックス

管弦楽:BBCウェールズ・ナショナル管弦楽団

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印刷屋ボックス:ジェイムス・ギルクリスト(T)

帽子職人コックス:ニール・デイヴィス(Br)

家主・元義勇軍軍曹バウンサー:ドナルド・マクスウェル(Br)

[2004年12月録音]
【CHANDOS:CHAN 10321(輸)】