山本直純といえば、日本のクラシック音楽の普及に努めた功労者といえる指揮者であり、作曲家でもある。指揮者としての印象が大変強く、その独特の指揮振りと風貌と語り口で人気を博した。そんな彼が作曲した作品は、オーケストラから放送音楽や童謡まで多岐に亘る。代表作には童謡『一年生になったら』『歌えバンバン』や映画『男はつらいよ』が挙げられるが、個人的には「この『白銀の栄光』を語らずして、山本直純を語ってはいけない!!」と声高に主張したい。これは戦後日本の行進曲を語るには忘れてはならない傑作である。


この「白銀の栄光」は札幌冬季五輪の入場行進曲として作曲されたが、今までに日本で生まれた数々の「マーチ」とはちょっと毛色が違く感じる。今までの日本のマーチは、ドイツ的な力強く勇壮な曲調を連想させるが、この曲はなんともフランス的で、まるで水彩画を見ているかのような感覚を覚える。常に落ち着きを払い、しかしながら颯爽とし、溌剌とした空気も感じられる、正に「シンフォニック・マーチ」であり、彼の多才振りを実感できる作品といえる。


陸上自衛隊の中央音楽隊と東部方面音楽隊の聴き比べはどちらも甲乙つけ難い演奏だ。中央音楽隊の演奏は、流麗なメロディーラインを際立たせるべく、優雅なマーチといった印象。対照的に、東部方面音楽隊の演奏は、打楽器群を効果的に際立たせており、いかにも軍楽隊といった印象を受ける。個人技が多少劣るのが玉に傷だが、中央音楽隊に負けず劣らずの力演だ。


【推奨盤】
乾日出雄とクラシック音楽の臥床
船山紘良/陸上自衛隊中央音楽隊[録音年不詳]
【KING RECORDS:KICW 3013】


【推奨盤】
乾日出雄とクラシック音楽の臥床
古荘浩四郎/陸上自衛隊東部方面音楽隊[2004年1月録音]
【UNIVERSAL:UCCS-1058】