チャイコフスキーが作曲したバレエの最高傑作『眠りの森の美女』の全曲版を紹介する。名盤といわれると意外と少ないのがこの『眠れる森』であるが、その作品の長大さがゆえか否かは定かでないが、「これ」といわれる全曲盤の名録音が無いといえる。
そんな中で個人的に愛聴しているのがこのプレトニョフ盤である。個人的にロシアの音楽はロシアのオーケストラで聞くことをモットーとしている自分であるが、この録音もまたその思いを強くさせられるものだ。全体的にメリハリを効かせ、ワルツに代表されるように、予想以上に重厚に音楽を紡ぎあげているのが特徴的である。この録音で「バレエが舞えるか」甚だ疑問ではあるが、音楽的にドラマティックに仕上げられた一つの交響的描写としては、他の録音の追随を許さないものがあると感じる。

【推奨盤】
乾日出雄の揺蕩うクラシック音楽の臥床
ミハイル・プレトニョフ/ロシア・ナショナル管弦楽団[1997年10月録音]
【DG:UCCG-4238/9】