日本人はどうして「お涙頂戴」的な「泣き泣き」な旋律が好きなのか・・・。自分もそのひとりでもあるので、否定するつもりはもちろん無い。時として、そういう音楽が無性に聴きたくなるときがあるのが人間なのかもしれない。
今日紹介する作品も「泣き泣き」の旋律が印象的である。ヴィターリのシャコンヌだ。
自分としては、バッハのシャコンヌと並んで好きな曲のひとつであり、詩情溢れるヴァイオリンの悲哀とも感傷的とも言えるメロディアスな響きは、聴く側の心に強く訴えかけてくる。逆に言うならば、この曲を演奏して聴き手の心に訴えかけられない演奏家であれば、その演奏家にはヴァイオリンを持つ資格は無いといってもいいだろう。
今日紹介する五嶋龍の演奏もまた、泣けてくる。高橋博子の絶妙なオルガンの伴奏も特筆に価するが、彼の音楽的成長を物語るに難くない説得力に満ちた演奏を繰り広げている。彼の音楽家としての成長を楽しみにさせてくれる一枚といえるだろう。

【推奨盤】
乾日出雄の揺蕩うクラシック音楽の臥床
五嶋龍(Vn)/高橋博子(Org)[2005年6月録音]
【DG:UCCG-1252】