劇場のこけら落としのために書かれたベートーヴェンの祝典劇《献堂式》は、昨今はほとんど演奏される機会が無い。しかしながら、この祝典劇は実に美しくも華やかな、まさに祝祭の雰囲気に富んだ壮大な構成になっている。
ソプラノとバリトン、合唱を伴い、何故に今日演奏されないのか、疑問に思えるほどに聴きどころ満載である。壮麗にして華麗な合唱に、ソプラノとバリトンの二重唱。「さすが、ベートーヴェン」と言いたくなるような作品といえる。ちなみに第4曲は、かの有名な「トルコ行進曲」。それだけでも興味が湧いてくる人もいるかもしれない。
そんな演奏される機会が少ないこの作品をアバドとベルリン・フィルが録音を残している。アバドの洗練されたタクト裁きで端整のとれたスマートなベートーヴェンを堪能できるといえる。
【推奨盤】
クラウディオ・アバド/シルヴィア・マクネアー(S)/ブリン・ターフェル(Br)/ブルーノ・ガンツ(語り)/ベルリン放送合唱団/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団[1994年録音]
【DG:POCG-1961】