ブラームスは合唱を伴う作品を多く残している。特にドイツ・レクイエムに代表されるオーケストラを伴う作品では、シンフォニーで聞かせる起伏に富んだ音楽とは対象的な静謐な美しさに溢れた音楽を成し、それこそがブラームスの魅力だと語る者も多いといえる。
ここで紹介する哀悼の歌(悲歌)もまた、美しさは他の作品の追随を許さないものがある。友人の画家の死を悼み作曲され、冒頭ではその悲しみに満ち溢れている。しかし、その悲しみに終始するのではなく、シラーの詩によって生命の浄化へと導かれて曲は終結する。最後に「愛する者の口で哀悼の歌が歌われることもすばらしい」と繰り返されるこの詩こそ、この曲の持つ真意を物語っていると言えるだろう。
ここで紹介するドレスデン・フィルの演奏も、実に抑制された情念を感じ取ることができるだろう。フランスの印象が色濃いプラッソンの指揮は、この作品をちょうど良い「軽さ」に纏め上げており、新たなブラームスの世界を体験できる。 重たすぎず、軽すぎず・・・、いい具合に仕上がっている。

【推奨盤】
乾日出雄の揺蕩うクラシック音楽の臥床
ミシェル・プラッソン/エルンスト・ゼンフ合唱団/ドレスデン・フィルハーモニー合唱団/ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団[1998年4月録音]
【EMI:7243 5 56807 2(輸)】