ムソルグスキーの『展覧会の絵』。これほどまでに多くの音楽家が手を変え品を変え様々な響きを探求した作品もそうは多くないだろう。そこで今日は、この名曲をチェロとアコーディオンの録音で紹介する。

チェロとアコーディオンの組み合わせ・・・、かなり異質でなかなか頭でこのデュオの奏でる展覧会をイメージすることは難しいだろう。実際、初めてこの録音を聞いた時、イメージしていたものと大きく乖離したその音楽に、戸惑いを感じ、その戸惑いは解消されることなく、「キエフの大きな門」まで辿り着いてしまう。多くの人がイメージするサウンドは恐らく、チェロが独奏楽器の役目を持ち、アコーディオンは「伴奏」のような役目を持つものだったと想像する。しかし実際は、チェロとアコーディオンは異質な響きであるものの、共存を果たしている。それは最初はかなりの違和感を覚えるものの、幾度か聞くうちに、チェロの持つもの悲しくも、ふくよかな音色と、アコーディオンの、時として無機質にも聞こえる音色とが、互いを尊重しあうかのように、メロディラインを奏でるのである。気が付くと両者の「スリリングな闘い」に耳を奪われてしまうこの録音は一種の麻薬だ。


【推奨盤】
乾日出雄の勝手なクラシック音楽備忘録
長谷川陽子(Vc)/ミカ・ヴァェユリュネン(Acco)[2001年4月録音]

【Victor:VICC-60260】