ひと昔前は「高校教師」や「家なき子」に代表される野島伸二脚本のテレビドラマの音楽を数多く担当し、最近では「砂の器」の音楽を手掛けた千住明の作品に注目だ。壮大にして過剰なまでに劇的なカンタービレ。しかしながら、その音楽は不自然ではなく聴き手をその世界(ドラマ)へとスマートにエスコートするのである。シリアスな題材やNHKのような少し「お堅い」番組の音楽でその本領は発揮されており、音楽の語り口にはこぞって一貫性を感じることができる


しかし、ここで紹介する音楽はシリアスでもなければお堅いNHKでもない。壮大なファンファーレに始まり流麗にして堂々たる金管と弦の響き。華麗にしてドラマティックな音楽はここでも健在であり、展開部でのメロディアスなサウンドは、美しくも劇的。番組を知らずとも、この作品の魅力に引き付けられるはずだ。千住の意外な一面ともいえるサウンドであり、放送音楽の域を超えた魅力を孕んでいるともいえるかもしれない。


【推奨盤】
ハンス・ロットをこよなく愛する『乾日出雄の勝手な備忘録』
小松長生/新日本フィルハーモニー交響楽団[2006年4月録音]
【EMIミュージック・ジャパン:TOCT-26733】