ソビエト連邦初のバレエとして大ヒットしたグリエールの『赤いけしの花』も、昨今ではその中の一曲である『ロシア水兵の踊り』が時折演奏されるくらいで、全曲を耳にすることはほとんど無くなってしまった。社会主義国において、後期ロマン派の伝統に則った書法で書かれており、曲風は実にわかりやすく、全体的に美しさが強調された実に単純明快な作品といえる。この作品を的確に表現しているのがNAXOSのリードであり、そのまま紹介しようと思う。

『政治的要素と華麗なエキゾチズムが結託したあまりにもすてきな”時代の産物”』

ここで紹介するNAXOS盤は、廉価盤の域を超えた演奏水準に達していて、かなりのお得感を味わえる。魔術師のような気功師さながらの独特の指揮スタイルのアニハーノフは、バレエ音楽のプロフェッショナルだけあり、全曲にわたり、均整の保たれた演奏を展開している。そんな中でも常に、「熱い」劇的な表現に努めているといえるだろう。バレエファンは必聴である。

【推奨盤】
ハンス・ロットをこよなく愛する『乾日出雄の勝手な備忘録』
アンドレ・アニハーノフ/サンクトペテルスクブルク国立交響楽団[1994年6月録音]
【NAXOS:8.553496-7(輸)】