「作品77」と最晩年に書かれたかのような番号が付されているこの「運命」だが、実はチャイコフスキーが28歳の時の作品である。バラキレフに献呈したものの、自らそのスコアを破棄してしまったという、あまり演奏される機会が少ない作品である。
作品自体は3部形式で書かれており、後のチャイコフスキーの大成を予感させる魅力的なフレーズが所々に聞ける作品といえる。途中、若干の中弛みも否めなくはなく、作曲者自身がこの曲に及第点を与えなかった理由も頷ける。しかし、途中で何度も登場する弦楽器による叙情的なカンタービレは、まるでオペラ『エフゲニー・オネーギン』の「手紙の場面」をも彷彿とさせるロマンティックなもので、その旋律を聴いただけでも「ホロッ」とさせられてしまう魅力がある。その響きに出会うだけでも充分に満足できる作品といえるチャイコフスキーの『運命』である。

【推奨盤】
乾日出雄とクラシック音楽の臥床
エフゲニー・スヴェトラーノフ/ロシア国立交響楽団[1993年or1996年録音]
【CANYON:PCCL-00574】


乾日出雄とクラシック音楽の臥床-チャイコフスキー:交響曲第2番/プレトニョフ、RNO
ミハイル・プレトニョフ/ロシア・ナショナル管弦楽団[1996年3月録音]
【DG:453 446-2】