「アンコールをやってゐますが、なにかみじかいものでもきかせてやってくださいませんか。」

すると楽長がきっとなって答へました。

「いけませんな。かういうおおもののあとへ何を出したってこっちの気の済むやうには行くもんでないんです。」

「では楽長さん出て一寸挨拶して下さい。」

「だめだ。おい、ゴーシュ君、何か出て弾いてやってくれ。」

「わたしがですか。」ゴーシュは呆気にとられました。

「君だ、君だ。」ヴァイオリンの一番の人がいきなり顔をあげて云ひました。

《化(教え導く)絡(つながり)を調べる。

 等(平等)の諦(真理)は仏の化(教え導くこと)推しはかり、鬼(死者)を済(救う)講(話)である。

 学(研究し)調べ、推しはかる。

 逸(隠れた)寸(ごくわずかな)相(二つのものが互いに同じ関係にあること)を察し解く。

 訓(字句を解釈し)化(形、性質を変えて別のものになること)を推しはかる談(話)であり、法(神仏の教え)の記である。

 訓(字句を解釈し)訓(教え導くこと)が逸(隠れている)。

 判(可否を定め)認(見分けること)で願いを運(巡らせている)。

 

 それからあの猫の来たときのやうにまるで怒った象のやうね勢いで虎狩を弾きました。

《平(平等)である雷(神なり)、度(悟りの世界)の衝(重要なところ)は済(救い)である。

 個(一人一人)が主(中心)となる談(話)である。

 

「ゴーシュ君、よかったぞお。あんな曲だけれどもこゝではみんなかなり本気になって聞いてたぞ。一週間か十日の間にずいぶん仕上げたなあ。十日前とくらべたらまるで赤ん坊と兵隊だ。やろうと思へばいつでもやれたぢゃないか、君。」

《訓(教え導くこと)を極める。

 翻(形を変えてうつす)記の文が逸(隠れている)ので終(最後まで)換(入れ替える)。

 詞(言葉)は常の等(平等)を化(教え導き)、全て釈(意味を明らかにする)謀(計画、はかりごと)はみ蔽(見えないようにしている)

 他意は詞(言葉)で化(教え導き)注(書き記すこと)を兼ねて律の記を運(巡らせている)。》

 

 その晩遅くゴーシュは自分のうちへ帰って来ました。

《挽(死を悼む)質(内容)の文であり、鬼(死者の魄)は雷(神なり)。