今度は彼の思考の筋道からして、自分には一体どんな自殺すべき理由があるだろうか、と自問してみた。たとえばとなりに二人組が陣どっていて、彼の朝食を平らげてしまった、という理由でか?

※思考の筋道/Gedankengang→Gedenken/記憶、回想

 朝食/Fruhstuck→Fruh/昔の、stuck/出来事

《今度は彼の記憶からして、自分には一体どんな自殺すべき理由があるのだろうか、と自問してみた。たとえばとなりになにかの二人組が陣どっていて、彼の昔の出来事(ユダの件)を平らげてしまった、という理由で?

 二人の行為は非常に好意的である。ユダの件で問われる罪を引き被っているのだから、子孫に罪はないと。

 

そして監視人たちの知能程度があんなにも低劣なものでなかったら、彼もまた同じ確信からして、彼を一人にしておくことに何の危険も認めなかったのだと、そう考えてもいいところだが。

※知能程度/geistige/精神的、霊の

 低劣/Beschranktheit→Weseneinheit/三位一体

そして監視人の霊があんな三位一体(ヴィレムは天のお父さま、主)でなかったらかれらもまた穴時確信(ユダの件で自殺などできない)からして彼を一人にしておくことに何の危険も認めなかったのだと、そう考えてみいいところだが。

《そうでないのでなんらかの危険を感じていたに違いない。だから、彼をいぶからせたわけである。二人は相容れない者同士、不断の不仲なのである。》

 

彼は醸つのブランデーを閉まってある小さな壁戸棚のところへ行って、まず朝食のおぎないに一杯やり、さらに自分を元気づけるために二杯目を飲みほした。あとのはただ、もしかするとそんな用心が必要になるかもしれぬ、ありうべからざる場合にそなえてだったが。

※一杯、二杯目→ein Glaschen、zwites Glasch(昔のドイツの金銭)

 

そのときとつぜん隣室から呼ぶ声が死手、彼は歯をグラスにぶつけるほどびっくりさせられた。

※呼び声/Zuruf→zulauf/群衆

 歯/zahn→ziehen/線を引く、線条をつける

 グラス/Glas→Glanz/光輝

☆雲のなかから一条の光が線条をつけてKのところに差し込んだという光景。

 監察官(Kの祖先たち/群衆)

 

「監察官どのがお呼びだ!」というのだった。彼をびくっとさせたのは、その叫び声、短い、ぶっちぎれた、軍隊式の叫び声でこれが監視人フランツのものとはとうてい信じられなかった・

※びくっとする/erschreckte→Erdsicht(空から見た)地上の景観

 叫び声/schreien→schrein/棺

 ぶっちぎれた/abgehackte→Hack/践民

 軍隊式/militarische→mitmensch/同じ人間、同胞

 軍隊/Armee→amen

☆彼が見た地上の景観は棺桶(としか言いようがなく)践民、同胞の叫び声で、これはまさしくユダ(わが民族の光景)であった。

 ただ単に、短い、ぶっちぎれた、軍隊式の叫び声は(アーメン)だろうか。

 キリストの殺害者として裏切り者となったユダ(フランツ)があの世で「アーメン」と言っているのかどうか?フランツの物とはとうてい信じられなかった、とカフカは書く。

 

ただし命令そのものは彼には大歓迎であった。

「監察官どのがお呼びだ」というのは懐かしい父母に会えるのだから。