自衛隊で学んだこと | 旧ブログ

自衛隊で学んだこと



台湾でも韓国でも日本以外のアジアの国では
国を守ることは、国を作ることの第一条件。

その国に住む人にとって
当然のことと考えられています。
日本では、こうして中丸さんに
毎月紹介していただく必要があります。

以下、今月の文章はとくに皆様にご紹介したいと思います。

月刊「ぺるそーな」10月号の中丸 知

ルールや習慣といったものは、
それが奇異なものであっても、
内部にいる人間にとってはごく当たり前の「常識」である。

そのことを外部の人間に「なぜ」と問われても、
それが「常識」である以上きちんと
説明できない場合が非常に多い。

特に自衛隊の場合、自分たちが特殊である
という思いこみが隊員の側にもあるので、
「いやぁ、自衛隊って変ですよね」で終わってしまう。

ルールや習慣があるのは
それなりの理由があってのことなのだ、
という認識は一般に不足しがちだ。
 
先日ある店の模様替えを
ちょこっと手伝った時のことである。
 
整理整頓や掃除に関しては
元自衛官である私の独擅場であり、
誰も文句は差し挟まなかったのだが、

こと本の並べ方についてだけは
その場にいた全員からこれでもかと言うほど非難された。
 
自衛隊では本を内容上の分類で並べたりはしない。
基本的に何でも直角水平、
あくまでも見栄え重視である以上、
本も背の順に並べるのが「常識」だ。
 
それに対し、私以外の人は異口同音に、
それはやり過ぎ、本質を間違っている、というのだ。

私から言わせれば、ここまで見せることに
労力を費やしてきて最後に実用が
しゃしゃり出てくる理由がわからない、

何千冊もあるわけではあるまいし、
本など背表紙をみればそれでわかる。
見た目を重視して何が悪い、となる。
 
結局のところ、本棚を実用と見る人々と、
飾りと見る私の対立だったのだが、
最後にある人がこういった。

「普段あまり合理性とか実用性といったことに
ついて深く考えたりはしない我々が、
実用性について非常なこだわりを見せているのに、

本来、実用とかリアリズムが極限まで
求められるはずの自衛隊の常識が、
非実用的な方向にあるのがとても面白い」
 
こういわれてぐうの音も出ない自衛官は
多いのではないだろうか。

私も現役時代は本を背の順に並べることの
アホらしさをことあるごとに感じていた。
しかし、これらの考え方は明らかに見当違いなのだ。
 
見せている部分は例外なく飾りである。
 
これは自衛隊に限らず本当に表裏の
大切さをわかっているものにとっては、
当然の考え方ではないだろうか。
 
たとえば、それなりの喫茶店やレストラン
ならば本当に使う食器や食材は、
客から見える食器棚には置いていないはずだ。

見栄えの悪い実用品は、必ず見えない
ところに合理的に配置してある。

人から見える部分はあくまでも美しく、
整然と。店の雰囲気をよくすることこそが
見える部分の役割であり、
それが真の意味での見える部分の実用なのだ。
 
自衛隊においても、たとえば艦船や戦車など
の見える部分というのには
実は見せるための部分で、

それこそが軍隊の「威容」を代弁する部分なのだ。

多少の実用性を犠牲にしても見た目の美しさ、
整然とした雰囲気を醸し出すことは、
見せる部分の何よりも大切な役割だ。

自衛隊における本棚も、
この見える部分に当たる。

第三者に雑然とした印象を与えれば、
防御力の重要な一部分である「威容」を失ってしまう。
 
食器棚にあふれるほど食器を入れ、
カウンターの上に様々な調味料や
未使用の紙ナプキンの袋などを所狭しと
置いているような寂れた店を引き合いに出すまでもない。
 
変な本の並べ方も、
「見た目こそが大切」ということを考えれば
すぐに理解できる。

これは自衛隊で学んだことの中でも、
最も大切なことの一つだといってもいい。